寄稿(連載)

現代を見つめて(78) 子供たちと向き合って 文・石井光太(作家)

子供たちと向き合って

文部科学省の発表によれば、国公立の小中学校の不登校(三十日以上欠席)の生徒数が二十四万人を突破したそうだ。少子化にもかかわらず九年連続で増加しており、前年度比で二十四.九%増となっている。病欠、別室登校、フリースクール登校の生徒を含めれば、事態はより深刻だ。

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忘れられた日本人――フィリピン残留日本人二世(4) 写真・文 猪俣典弘

「一食を捧げる運動」に育てられた奨学生が支援の担い手に

戦争の憎しみを乗り越え、懺悔と慰霊が築いてきた対話と交流

立正佼成会の会員がフィリピンを訪問したのは、1973年のことでした。「第1回青年の船」が就航し、約500人の青年部員が渡航先の一つであるフィリピンの地に降り立ったのです。当時はまだ、フィリピン各地に戦争の傷痕が生々しく残っていました。日本軍によって多くの同胞を殺され、社会を破壊され、尊厳を踏みにじられたフィリピンの人々の怒りと哀しみに直面した青年たちは言葉を失ったそうです。そこから、立正佼成会の青年による「慰霊と懺悔(さんげ)」の取り組みが始まりました。

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共生へ――現代に伝える神道のこころ(21) 写真・文 藤本頼生(國學院大學神道文化学部教授)

神紋は個々の神社や御祭神を示すシンボルでもあり、神社の歴史や由緒の一部

小生はいわゆる掃苔家(そうたいか)、“墓マイラー”ではないが、時折、各地の墓苑に赴いて調査を行うことがある。近年の墓苑では、墓石の表面に「〇〇家之墓」といった名称がなく、「倶会一処(くえいっしょ)」といった仏教にちなむ言葉をはじめ、花や楽譜、その人が好んだ文章や四字熟語、あるいは生前の事績が記されるなど、さまざまな形式の墓標が見られる。現代社会における墓は、かつてのような均一的なものでなく、多様な墓の在り方が共存しているのだ。

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利害を超えて現代と向き合う――宗教の役割(68) 文・小林正弥(千葉大学大学院教授)

統一的管理システムと全体主義

安倍晋三氏の国葬が終わった。各種世論調査では評価しない人の方が多く、岸田内閣支持率はさらに下落を続けている。やはり、安倍氏関連の人々の「盛者必衰(じょうしゃひっすい)」が始まっているようだ。

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現代を見つめて(77) 旅が教えてくれるもの 文・石井光太(作家)

旅が教えてくれるもの

国が観光需要を喚起させるために行う「全国旅行支援」がスタートし、久々に旅行熱が高まり出している。対象となるのは、主に娯楽としての国内旅行であり、コロナ禍によって長らく停滞した観光産業を活性化させるのが目的だ。

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忘れられた日本人――フィリピン残留日本人二世(3) 写真・文 猪俣典弘

フィリピン残留日本人二世の肖像

日本人として生まれるも、戦中戦後の混乱により無国籍状態に

戦後77年目を迎えた今も、フィリピンでは残留日本人二世の聞き取り調査が続いています。戦中に日本人の父親と離別、死別して現地に留(とど)まった子どもたちは、今や平均年齢83歳。いまだに国籍回復を実現できていない人たちは、出生証明書などの書類や父親との写真がほぼ消失しており、当時の公的な記録が残っていない人たちばかりです。

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共生へ――現代に伝える神道のこころ(20) 写真・文 藤本頼生(國學院大學神道文化学部教授)

豊かな実りをもたらす神助に感謝 神々と酒との縁に思いを馳せる

水田と里山に囲まれた田園風景が広がる新潟県長岡市の越路地区には、“米どころ新潟”を代表する日本酒「久保田」を醸造する朝日酒造がある。同酒造の仕込み水は、隣接する朝日神社の二の鳥居脇の湧き水「宝水」に連なる地下水脈を使用している。この「宝水」は、県内の醸造元で用いられる仕込み水の中でもとりわけ硬度が低い軟水だ。硬度の低い水は穏やかな発酵を促すため、淡麗かつ辛口の酒に向いており、まさに国内有数の吟醸酒造りに適した宝の水と言えよう。

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現代を見つめて(76) 「愛国心」という言葉 文・石井光太(作家)

「愛国心」という言葉

安倍晋三元首相の「国葬」に対する疑問の声が巻き起こっている。岸田文雄首相は、火消しをするように国会でこう述べた。

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利害を超えて現代と向き合う――宗教の役割(67) 文・小林正弥(千葉大学大学院教授)

盛者の「国葬」

「祇園精舎(ぎおんしょうじゃ)の鐘の声、諸行無常の響きあり。沙羅双樹(さらそうじゅ)の花の色、盛者必衰(じょうしゃひっすい)の理(ことわり)をあらはす。おごれる人も久しからず、ただ春の夜の夢のごとし。猛(たけ)き者も遂(つい)にはほろびぬ、偏(ひとえ)に風の前の塵におなじ」(『平家物語』第一巻)

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忘れられた日本人――フィリピン残留日本人二世(2) 写真・文 猪俣典弘

涙を流しながら日の丸を振り、両陛下をお迎えした彼らは誰なのか

両陛下が最後の「慰霊の旅」でマニラ戦に言及

上皇上皇后両陛下が御在位中、海外での最後の「慰霊の旅」としてフィリピンの土を踏まれたのは2016年1月のことでした。先の大戦で日米両軍によって激しい地上戦が繰り広げられたフィリピンへの訪問は、両陛下の強い願いで実現したそうです。

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