寄稿(連載)

栄福の時代を目指して(6) 文・小林正弥(千葉大学大学院教授)

驚愕の世界史的事件

読者の皆様は、映画『スター・ウォーズ』をご覧になったことがあるだろうか。宇宙の銀河共和国を守るジェダイ評議会を中心に共和国の盛衰や再興を描く物語だ。この中の『エピソード3/シスの復讐』における忘れがたい衝撃的なワンシーンとして、共和国のパルパティーン最高議長が実は、悪の中心である暗黒卿ダース・シディアスだったことがわかる映像がある。議長を徐々に信じてきた若きアナキン・スカイウォーカーは、それを知って初めは倒そうとしたものの、心理的誘惑にかかって操られてしまい、議長を逮捕しようとしたジェダイのNo.2(メイス・ウィンドウ)を殺してしまう。この結果、スカイウォーカーは暗黒面に落ちて暗黒卿ダース・ベイダーとなり、他の多くのジェダイも倒されて共和国は崩壊し、暗黒卿が操る銀河帝国へと変化してしまうのである。

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食から見た現代(14) “安心・安全”な食の時間〈前編〉 文・石井光太(作家)

神奈川県相模原市の閑静な住宅街にある児童養護施設「中心子どもの家」(https://kodomo.chusinkai.net/)に、調理スタッフたちが出勤するのは早朝の5時過ぎだ。寝静まっている暗い廊下を通って奥の調理室へ行き、前日に仕込んでおいた食材を手分けして調理していく。

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カズキが教えてくれたこと ~共に生きる、友と育つ~(3) 写真・マンガ・文 平田江津子

“運命の分かれ道”となった出会い

カズキは、3歳から知的障害児通園施設に通い始めました。就学先の小学校については、医師や専門家、施設スタッフの全員から「特別支援学校がふさわしい」と言われていたので、彼にとってそれがいちばん良い道だと思っていました。

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栄福の時代を目指して(5) 文・小林正弥(千葉大学大学院教授)

栄福学・序説の起点――科学主義の陥穽

「栄福学・序説」を、前回述べた議論を起点として進めてみよう。今の世界では、超越的実在を否定するか括弧(かっこ)に入れて物質世界だけを探求する学問(学問類型B:形而下限定学=けいじかげんていがく)がほとんどだ。この世界に慣れた研究者たちには、このような学問のあり方を自明視するあまり、あたかも不可視の世界は存在しないように考える習慣が身に付いてしまっている人が多い。この発想が教育や社会的通念において広がっているために、宗教や精神性は片隅に追いやられてしまった観がある。

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食から見た現代(13) 夜のフードパントリー〈後編〉  文・石井光太(作家)

夜の仕事に従事する女性と子どもへの支援活動を行う任意団体「ハピママメーカープロジェクト」。

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カズキが教えてくれたこと ~共に生きる、友と育つ~(2) 写真・マンガ・文 平田江津子

“ありのまま”を認めることができなかった後悔

2歳半で「小児自閉性障害」と医師から診断された息子・カズキ。ショックと不安に襲われた私を支えた一つが信仰でした。特に、物心ついた時から立正佼成会の信仰と共に歩む中で学んだ法華経の「法師品」です。その中に説かれる、人を救うために、自ら誓願して生まれてくるという「願生(がんしょう)」の教えに初めて触れた時、衝撃を受けました。

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栄福の時代を目指して(4) 文・小林正弥(千葉大学大学院教授)

新年の大計:栄福を実現するための包括的学問

皆様は新年を迎えてどのような抱負を持たれただろうか。私は喪中なので正月らしい祝い事は控えたが、この1年と言わず、10年以上にも及びそうな大計を立てた。その核心は、「栄福の時代に向けて」、人々の栄福を実現するための哲学と社会科学の包括的な学問を樹立する、というものだ。この哲学や学問体系を「栄福哲学」や「栄福学」と呼ぶことにしよう。

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食から見た現代(12) 夜のフードパントリー〈前編〉  文・石井光太(作家)

2024年8月の灼熱(しゃくねつ)の陽の下、埼玉県の東川口駅からほど近い築120年の古民家「もっこう館」には、20~30代の女性たちが続々と集まっていた。ある女性は幼い子どもの手をつなぎ、ある女性は溢(あふ)れる汗をハンカチで拭いながら建物の中に吸い込まれていく。

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カズキが教えてくれたこと ~共に生きる、友と育つ~(1) 写真・マンガ・文 平田江津子

自閉症の息子・カズキを授かって

息子・カズキは「自閉スペクトラム症、知的発達症」と医者から診断されています。その特徴を調べてみると、周囲とのコミュニケーション困難、言語発達の遅れ、興味の対象が限定的、強いこだわりを示す、変化が苦手などなど……たくさんの項目があります。「二つ当てはまれば自閉症の疑い」とありますが、カズキの場合は当てはまらないものが二つくらいしかない、というほどコテコテの“自閉君”です。

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栄福の時代を目指して(3) 文・小林正弥(千葉大学大学院教授)

動乱の世界:アメリカを支配するポピュリズム

連載『栄福の時代を目指して』2回目では、日本政治に生まれた「栄福政治への夜明け」という可能性について述べた。3回目では、世界全体のビジョンについて述べよう。前者には希望を感じても、世界全体の動向には不安を感じている人が多いに違いないからである。二つの大学で授業において学生に質問の時間を設けたところ、案に相違して、当該の授業内容に関してよりも、今の内外の状況について私の考えを聞きたいという声が相次いだ。例えば、総選挙、兵庫県知事問題、ドナルド・トランプ大統領再選、日米関係、ウクライナ問題、中東問題、韓国の戒厳令布告、シリアの政変……というように。前回、日本政治には総選挙で民主主義回復という曙光(しょこう)が射(さ)したと述べたが、地球全体を見渡すと、混沌(こんとん)としており決して明るい図柄は浮かんでこない。この激動や混沌とした状況が、これまで政治に大きな関心を持たなかった若年層にも、政治的関心を高めたのだろう。

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