利害を超えて現代と向き合う

利害を超えて現代と向き合う――宗教の役割(87) 文・小林正弥(千葉大学大学院教授)

政治的腐敗と政治的疑惑

自民党の提出した改正政治資金規正法が成立した(6月19日)。政策活動費の使途公開を10年後にするなどさまざまな点で不十分な法案であり、満足のいく政治改革とは言えず、政治的浄化が達成されるわけもない。

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利害を超えて現代と向き合う――宗教の役割(86) 文・小林正弥(千葉大学大学院教授)

政治的激変の兆候

4月28日、衆議院の3選挙区で補欠選挙が行われた。自民党の裏金問題が原因となって、唯一候補を立てることのできた島根1区で自民党が敗北し、3選挙区とも立憲民主党が全勝した。さらに、立憲民主党と野党首位を争っていた日本維新の会も、候補者を立てた東京15区と長崎3区の双方で敗北し、東京15区では小池百合子都知事が応援した乙武洋匡候補も惨敗した。日本維新の会と、小池都知事が作った都民ファーストの会は、日本におけるポピュリズムの代表的存在と目されている。

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利害を超えて現代と向き合う――宗教の役割(85) 文・小林正弥(千葉大学大学院教授)

復活の季節

4月になり、暖かい日が増えてきた。欧米では、生命の復活と繁栄を祝うイースター(復活祭、今年は3月31日)があり、日本では桜が開花する季節がやってきて、学校では新学期が始まる。

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利害を超えて現代と向き合う――宗教の役割(84) 文・小林正弥(千葉大学大学院教授)

悪事露呈の時代

自民党の政治資金パーティー裏金問題は国民の失望を招いている。衆議院に続いて、参議院でも政治倫理審査会が開催されたが、ほとんど新しい事実は明らかにならなかった。そこで、野党4党は証人喚問を要求し始めた。これは、当然だろう。

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利害を超えて現代と向き合う――宗教の役割(83) 文・小林正弥(千葉大学大学院教授)

動乱時代に入った日本政治

自民党の6派閥の中で、裏金問題によって関係者が立件された安倍派・二階派・岸田派が解散を決め、続いて森山派や谷垣グループも解散を決定した。第81回の連載で書いたように、最大の権勢を誇った安倍派の解散には、多くの人が「盛者必衰(じょうしゃひっすい)――おごれる人も久しからず」(平家物語)という思いを抱いただろう。派閥が公式に解散したからといって、実体がなくなるとは限らない。けれども、安倍晋三元首相没後に集団指導体制になっていた安倍派は結集力を失うから、往時の力を復元することは難しいと思われる。

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利害を超えて現代と向き合う――宗教の役割(82) 文・小林正弥(千葉大学大学院教授)

動乱の辰年

正月のお屠蘇(とそ)気分が、石川県で発生した震度7の能登半島地震で一気に覚めた。「明けましておめでとうございます」というあいさつに続いて、災害の心配が口にされるようになってしまった。私自身も、多くの被害を受けた七尾市などで対話型講義を行ったことがあり、出会った人々の安否を思い、暗然とした。

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利害を超えて現代と向き合う――宗教の役割(81) 文・小林正弥(千葉大学大学院教授)

現代版「平家物語」における「鐘の音」

安倍晋三元首相の国葬の際に、この連載(第67回)で『平家物語』の「祇園精舎(ぎおんしょうじゃ)の鐘の声、諸行無常の響きあり。沙羅双樹(さらそうじゅ)の花の色、盛者必衰(じょうしゃひっすい)の理(ことわり)をあらはす」という有名な文句を引用した。安倍政治の「必衰」を予感したからだが、それから1年3カ月が経って、日本政治の「盛者必衰」が現実化する時が遂(つい)に到来しつつあるようだ。安倍政治に批判的なキャスターらが降板していったテレビや新聞で、現代版『平家物語』の末路を予感させるニュースが、「鐘の音」のように連日鳴り響いている。

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利害を超えて現代と向き合う――宗教の役割(80) 文・小林正弥(千葉大学大学院教授)

政治哲学から見る旧統一教会への解散命令請求

文部科学省は、民法上の不法行為を根拠に、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)への解散命令を東京地裁に請求した(10月13日)。宗教法人法における「報告徴収・質問権」を7回にわたって行使し、教団からの資料収集や元信者への聞き取りを行い、この決定に至ったのである。

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利害を超えて現代と向き合う――宗教の役割(79) 文・小林正弥(千葉大学大学院教授)

イスラエル・ガザ「戦争」

ウクライナとロシアの戦争が続く中、もう一つの戦争が始まってしまった。パレスチナ自治区ガザ地区を実効支配するイスラーム武装組織ハマスが、イスラエルに約2500発のロケット弾を発射し、100人が死亡し、800人以上が負傷した(10月7日)。イスラエル政府は「戦争状態」という声明を出して、ガザ地区に報復の空爆を開始し、ガザ地区の住民110万人に退避要求を出して地上侵攻の準備を整えた(16日)。アメリカは人道危機への対処には傾注しているが、地上侵攻は黙認している。アメリカやヨーロッパの多くの国々がイスラエル寄りであることは否みようがない。安保理決議にも採択の見通しはない。

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利害を超えて現代と向き合う――宗教の役割(78) 文・小林正弥(千葉大学大学院教授)

自業自得の「第9波」

新型コロナウイルス感染症の流行が続いている。第9波が長引いて影響が深刻化し、各地の学校で学級閉鎖や行事の中止、公共交通機関の運休、医療崩壊、救急車の出動が逼迫(ひっぱく)するといった状況がようやく報道され始めた。第8波に近づいていると言われ始めたが、実際のレベルは誰にも正確には分からない。

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