利害を超えて現代と向き合う
利害を超えて現代と向き合う――宗教の役割(90)最終回 文・小林正弥(千葉大学大学院教授)
四十九日と死後の審判
四十九日は故人を偲(しの)びつつ、その冥福を祈る期間である。宗教的発想ではたいてい、この世を超えた超越的世界があり、死者の魂は現世からその世界へと移行すると考えられている。日本の仏教や民間信仰では、この期間に死者たちは「中有(ちゅうう、中陰ともいう)」という状態にあり、冥土の旅をしていて、「十王」という10人の裁判官の審判を受けるとされている。“初七日”後の最初の裁判から始まって、七日ごとに七回裁判があり、14日目に三途(さんず)の川を渡る。その後、35日目には閻魔(えんま)大王の裁判があり、“四十九日”に最後の裁判が行われて、生前の行いに応じて極楽や地獄に行くとされている。いわゆる成仏のためのものだ。この成仏のために法要や供養、祈りに意味があるとされており、だからこそ、この期間は死者のための集中的な祈りの期間でもある。※第68回:葬儀における宗教的意味
利害を超えて現代と向き合う――宗教の役割(89) 文・小林正弥(千葉大学大学院教授)
死者とお盆
日本の民間信仰では、お盆には、縁のある死者が地上に戻ってきて、生きている人々と交流ができると信じられている。だから、日本人はこの時期にお墓参りをし、お供えをして、死者に対して祈る。この慣習は、今でもかなり受け継がれている(拙著『神社と政治』角川新書、2016年、第5章)。
利害を超えて現代と向き合う――宗教の役割(88) 文・小林正弥(千葉大学大学院教授)
東京都知事選におけるポピュリズムの勝利
東京都知事選は、小池百合子知事が圧勝した。当初は前参議院議員の蓮舫氏との与野党対決とみられていたが、実際には広島県安芸高田市の前市長・石丸伸二氏が2位で、3位となった蓮舫氏は惨敗と評されている。この選挙をどう考えるべきだろうか。
利害を超えて現代と向き合う――宗教の役割(87) 文・小林正弥(千葉大学大学院教授)
政治的腐敗と政治的疑惑
自民党の提出した改正政治資金規正法が成立した(6月19日)。政策活動費の使途公開を10年後にするなどさまざまな点で不十分な法案であり、満足のいく政治改革とは言えず、政治的浄化が達成されるわけもない。
利害を超えて現代と向き合う――宗教の役割(86) 文・小林正弥(千葉大学大学院教授)
政治的激変の兆候
4月28日、衆議院の3選挙区で補欠選挙が行われた。自民党の裏金問題が原因となって、唯一候補を立てることのできた島根1区で自民党が敗北し、3選挙区とも立憲民主党が全勝した。さらに、立憲民主党と野党首位を争っていた日本維新の会も、候補者を立てた東京15区と長崎3区の双方で敗北し、東京15区では小池百合子都知事が応援した乙武洋匡候補も惨敗した。日本維新の会と、小池都知事が作った都民ファーストの会は、日本におけるポピュリズムの代表的存在と目されている。
利害を超えて現代と向き合う――宗教の役割(84) 文・小林正弥(千葉大学大学院教授)
悪事露呈の時代
自民党の政治資金パーティー裏金問題は国民の失望を招いている。衆議院に続いて、参議院でも政治倫理審査会が開催されたが、ほとんど新しい事実は明らかにならなかった。そこで、野党4党は証人喚問を要求し始めた。これは、当然だろう。
利害を超えて現代と向き合う――宗教の役割(82) 文・小林正弥(千葉大学大学院教授)
動乱の辰年
正月のお屠蘇(とそ)気分が、石川県で発生した震度7の能登半島地震で一気に覚めた。「明けましておめでとうございます」というあいさつに続いて、災害の心配が口にされるようになってしまった。私自身も、多くの被害を受けた七尾市などで対話型講義を行ったことがあり、出会った人々の安否を思い、暗然とした。