栄福の時代を目指して
栄福の時代を目指して(3) 文・小林正弥(千葉大学大学院教授)
動乱の世界:アメリカを支配するポピュリズム
連載『栄福の時代を目指して』2回目では、日本政治に生まれた「栄福政治への夜明け」という可能性について述べた。3回目では、世界全体のビジョンについて述べよう。前者には希望を感じても、世界全体の動向には不安を感じている人が多いに違いないからである。二つの大学で授業において学生に質問の時間を設けたところ、案に相違して、当該の授業内容に関してよりも、今の内外の状況について私の考えを聞きたいという声が相次いだ。例えば、総選挙、兵庫県知事問題、ドナルド・トランプ大統領再選、日米関係、ウクライナ問題、中東問題、韓国の戒厳令布告、シリアの政変……というように。前回、日本政治には総選挙で民主主義回復という曙光(しょこう)が射(さ)したと述べたが、地球全体を見渡すと、混沌(こんとん)としており決して明るい図柄は浮かんでこない。この激動や混沌とした状況が、これまで政治に大きな関心を持たなかった若年層にも、政治的関心を高めたのだろう。
栄福の時代を目指して(2) 文・小林正弥(千葉大学大学院教授)
「栄福の時代」への日本政治
新連載の開始にあたって人文社会科学の全領域に射程を拡大したと述べたが、政治が人々の幸福に大きな影響を与えることは確かだ。そこで新連載の2回目には政治に焦点を当てようと思う。前の連載『利害を超えて現代と向き合う』ではこの主題に重点があり、時の政治の危機や問題点についての陰鬱(いんうつ)な内容が少なくなかった。でも新連載では、『栄福の時代を目指して』というタイトルにふさわしく、明るい調子(トーン)で書くことができる。急に行われた総選挙で政治状況に大激変が生じ、新しい時代が現れたからだ。
栄福の時代を目指して(1) 文・小林正弥(千葉大学大学院教授)
学問的エッセー――学問と芸術の架橋という夢
『利害を超えて現代と向き合う』の最終回に書いたように、8月の父逝去を契機に自分の人生の来し方行く末を省みたので、心機一転してタイトルを更新し、新しい内容も加えて執筆することになった。編集部が調べたところ、2017年3月以来、毎月連載してきた寄稿は90回に及んでおり、ちょうど良い区切りでもある。そこで今回は、〈総選挙が急に行われることになって政治についても書きたくはあるものの〉この新連載の内容について説明したい。
※総選挙に関しては、『利害を超えて現代と向き合う』の第81~84回などを参照