バチカンから見た世界

バチカンから見た世界(150) 文・宮平宏(本紙バチカン支局長)

性差別なく普遍の救いを説くローマ教皇と法華経

バチカンのシスティーナ礼拝堂にあるミケランジェロ作の「最後の審判」では、審判を下す神が“男性”として描かれている。このように、アブラハム信仰(ユダヤ教、キリスト教、イスラーム)では、カトリック教会も含めて、人間を男女に区別し、結婚を男女間での契りとして解釈する傾向を強くしてきた。

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バチカンから見た世界(149) 文・宮平宏(本紙バチカン支局長)

3宗教間の融和なくして中東和平は実現できない(7)―ガザ戦争に割れるユダヤ教徒たち―

イスラエルのネタニヤフ首相は、ヘブライ語聖書(旧約聖書の原典)の一節を引用しながら、イスラエル軍によるパレスチナ領ガザ地区でのイスラーム過激派組織ハマスの掃討作戦を正当化した。この中で、「アマレク人があなた(イスラエルの民)に対して何をしたかを思い起こせと、私たちの聖書が呼びかけている」「私たち(イスラエル国民)は、(アマレク人の所業を)記憶している」と訴えている。

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バチカンから見た世界(148) 文・宮平宏(本紙バチカン支局長)

3宗教間の融和なくして中東和平は実現できない(6)―対話のない戦争―

1月15日、ローマのカトリック大学で新学期の始業式が行われた。その席上、聖都エルサレムのラテン(ローマ)系カトリック教会のピエルバッティスタ・ピッツァバッラ大司教(枢機卿)が講演した。

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バチカンから見た世界(147) 文・宮平宏(本紙バチカン支局長)

3宗教間の融和なくして中東和平は実現できない(6)―イスラエル・ハマス間戦争後のガザ地区はどうなるのか?―

イスラエルのネタニヤフ政権は、パレスチナ領ガザ地区におけるイスラーム過激派組織ハマスの掃討作戦が長期間にわたると予告し、作戦終了後もイスラエルの安全保障を理由に、ガザ地区におけるパレスチナ自治政府(PNA)の主権を排除し、実効支配を予測させるような発言をしている。

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バチカンから見た世界(146) 文・宮平宏(本紙バチカン支局長)

3宗教間の融和なくして中東和平は実現できない(5)―「2国家共存」を拒否するイスラエル―

「47NEWS」は1月19日、イスラエルのネタニヤフ首相が18日の記者会見で、「バイデン米政権が求めるパレスチナ国家樹立による『2国家共存』を拒否する考えを改めて表明した。米側にも伝達したと述べた」という共同通信の記事を掲載した。さらに、「ヨルダン川西岸の全域について、将来的に『イスラエルが治安を管理する必要がある』とし、西岸のパレスチナ自治区への関与も強める意向を示した」と報じた。

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バチカンから見た世界(145) 文・宮平宏(本紙バチカン支局長)

3宗教間の融和なくして中東和平は実現できない(4)―イスラエル・ハマス間戦争の中で2民族の共存を生きる人たち―

第二バチカン公会議(1962~65年)が示した刷新運動を継続しようと努力するイタリアのカトリック在家運動体「Viandanti」(巡礼者)は、同名の機関誌に掲載した『イスラエル/ユダヤ民族国家』と題する記事で、イスラエルが建国当時(1948年)に国家のアイデンティティーとして「成文憲法」を制定しなかった理由として、立憲議会が「ユダヤ教の聖典『トーラー』(モーゼ法)」を国家のアイデンティティーとして選択したことを挙げている。

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バチカンから見た世界(144) 文・宮平宏(本紙バチカン支局長)

3宗教間の融和なくして中東和平は実現できない(3)―イスラエルのユダヤ人国家宣言―

バチカンは、中東紛争の「唯一可能な解決策としての2国家原則」を主張し、すでにパレスチナを国家として承認している。主要7カ国(G7)も11月8日、東京での外相会議で、「イスラエルとパレスチナが共存する『2民族2国家解決策』が平和につながる唯一の道だという立場を共有した」(8日現在、共同通信社=47NEWS)。

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バチカンから見た世界(143) 文・宮平宏(本紙バチカン支局長)

3宗教間の融和なくして中東和平は実現できない(2)―中東カトリック指導者の糾弾―

イスラエルとパレスチナ領ガザ地区を実効支配するイスラーム過激派組織ハマスとの間で戦闘が始まってから、40日(11月15日現在)が過ぎた。伊カトリック司教会議通信社「SIR」によると、カトリック教会の聖地(エルサレム)管理局のイブラヒム・ファルタス神父は、「私たちアラブ人は、40日後に死者を追悼する」「ユダヤ人が、約束の地に到着するまでに、シナイ半島の砂漠を放浪したのは40年間だった」「キリストが砂漠で孤独、飢え、誘惑と闘ったのは40日間だった」「(イスラエル軍が2002年のインティファーダ=抵抗運動=で蜂起したパレスチナ人戦闘員を捕獲するために)キリストの生誕教会を包囲したのは40日間だった」と指摘し、“40”という因縁に沿ってイスラエルとハマス間での戦闘が終われば、それは「神からの恩恵だ」と願望を表明したという。

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バチカンから見た世界(142) 文・宮平宏(本紙バチカン支局長)

3宗教間の融和なくして中東和平は実現できない(1)

パレスチナ領ガザ地区を実効支配するイスラーム過激派組織ハマスが10月7日、イスラエル領内に向けて5000発とも報じられた(イタリアのメディア)ロケット弾を発射した。イスラエル軍は、報復としてガザ地区を空爆した。双方の死者は2100人以上(11日現在、共同通信社=47NEWS=)に上る。同国のネタニヤフ首相は、「われわれは戦争状況にある。敵は、かつてない代償を払う」と声明を明かした。

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バチカンから見た世界(141) 文・宮平宏(本紙バチカン支局長)

バチカンのやまない核兵器廃絶アピール

9月26日は、国連が定める「核兵器の全面的廃絶のための国際デー」だった。ローマ教皇フランシスコは同日、9カ国語で発信される自身のX(旧ツイッター)アカウントを通し、「核兵器の保有は非倫理」であるとの確信を再表明するメッセージを投稿。教皇ヨハネ二十三世が公布した歴史的な平和回勅『地上の平和』(1963年)を引用しながら、「予測できない出来事が、(核兵器の)軍事態勢を始動させることも除外できない」と警告した。そして、核兵器禁止条約(TPNW)の批准国を増やすことで、「この『死の道具』を廃絶し、核兵器のない世界を構築するために努力していこう」とアピールした。

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