忘れられた日本人――フィリピン残留日本人二世(12)最終回 写真・文 猪俣典弘

無国籍のまま亡くなった残留二世たち

戦争が破壊して奪ったものを回復させることは人間の使命

苦難を歩んできた残留二世たちの生き方が問いかけるもの

一年間、苦難の戦後を生きてきた「忘れられた日本人」であるフィリピン残留日本人二世たちの声に耳を傾け、思いを馳(は)せて頂きありがとうございました。

戦前、フィリピンに渡った約3万の日本人移民。彼らは戦中に日本軍への協力を余儀なくされ、戦後は日本軍によるフィリピン人への残虐行為の報いを一身に浴びました。迫害の危険に晒(さら)されてきた残留二世たちのかすかな声は、私たちに何を教えてくれているでしょうか。私は、戦争という非人間的行為がもたらす悲惨さ、残酷さを思い知らされると同時に、私たち一人ひとりの平和に対する意識、「絶対に戦争を引き起こさない」という決意をいかに保ち続けるかが強く問われていると思うのです。

世界から目を向けると、日本は市街地に核兵器を落とされた世界で唯一の被爆国です。「鉄の暴風」とも言われる米軍の激しい爆撃で県民の4人に1人が命を落とした沖縄戦、都市部への無差別空襲などでも悲惨な被害を受けた国であります。その一方、アジア諸国に対しては、大きな被害を与えた加害者としての姿も浮かび上がってきます。こうした目を背けたくなるような事実も、生き証人の少なくなった今、遠い過去のものとなりつつあります。

戦争は、家族を引き裂き、共同体を破壊し、人間の心を失わせます。ですが、戦争によって傷つけられ、破壊され、消失したものを回復させるのも、また人間が担うべき使命ではないでしょうか。