弱小チームから常勝軍団へ~佼成学園高校アメリカンフットボール部「ロータス」クリスマスボウル3連覇の軌跡~(9) 【特別インタビュー】 文・相沢光一(スポーツライター)

4連覇に挑む今年のチーム

――それがあの大逆転につながったということですね。では、4連覇に挑む今年のチームはどのような個性を持っているのですか?

ひと言で表現するなら、“大人”ですね。彼らは1年生の時、厳しい3年生と若干甘い部分がある2年生を見ているわけです。そのせいか、部全体の調和を保ちながらチームを強くしていくことを一人ひとりが考え、行動するんです。ただ、その反面、強烈な個性がない点は気掛かりでもありました。

――確かに大人と言われるようなチームは意外に勝負弱い面があります

実際、シーズン前は練習試合をしても、この状態で大丈夫なのだろうかと思うことがありました。でも、この夏から現在までの間に見違えるように成長してくれました。夏は初めてハワイ合宿を行い、アメリカの高校生チームとも対等の試合ができた。また、都大会と関東大会は厳しい山に入ってしまいました。都大会は駒場学園、都立西、早稲田実業、早稲田高等学院、関東大会は慶應、立教新座、法政第二。いずれも決して気を抜けない強敵です。しかも多くの高校が戦力的に充実していて、今年の勝負にかけていました。しかし、そんな強い相手との厳しい試合を続けてきたことで選手たちは精神的にたくましくなった。ミスも数多く出ましたが、それによって課題が見つかり修正につなげることもできました。今年のチームの成長度は3連覇した3チーム以上だと思います。

――クリスマスボウルに向けて視界は良好、といえそうですね

いや、そんな気持ちでは試合に臨めません。立命館宇治は強いですから。昨年のリベンジということで気合も入っているでしょうし、厳しい試合になると思います。ただ、監督としては、4連覇という特別な山に登るのではなく、過去3回と同じ山を登る意識でいます。登山に例えると、同じ山でも登るたびに気象条件も変わりますし、体調も異なります。さまざまな厳しさが待ち構えているわけです。でも、登った経験がある山なら、ルートを間違えることはないし、困難にぶつかっても登頂への意欲を失うことはありません。私はそのガイド役として今年もロータスの選手たちを高校の頂上に立たせてやりたい。そんな思いでいます。

――監督としては特別な意識を持つのではなく、平常心で指揮を執るということですね。今年の試合会場、横浜スタジアムについては?

選手たちも3万人以上のキャパシティがある会場で試合をするのは初めての経験です。大勢の観客の前でプレーできることが楽しみでワクワクしているようです。そんな彼らを後押しするためにもOB会、父母会、佼成学園関係者の方々はできるだけ多くの方を誘って、応援に来ていただきたいですね。

それと最後に一つ付け加えたい情報があります。私は恩師・篠竹幹夫監督に率いられた日大フェニックス時代、そしてシルバースターで戦った社会人時代でも、数多く横浜スタジアムで試合をしてきましたが、一度も負けたことがありませんでした。今度はロータスを率いる監督として、選手にこの場所で勝利の喜びを味わわせてあげたい思いがあります。応援に来ていただく皆さん、選手たちを勇気づける力強い応援をよろしくお願いします。

※次回(最終回)は2020年1月16日の掲載予定です

【戦績】

令和元年度東京都アメリカンフットボール秋季大会兼全国大会予選

・1回戦(9月15日)
 佼成学園 34対11 駒場学園

・2回戦(9月22日)
 佼成学園 35対20 都立西

・準決勝(10月6日)
 佼成学園 34対9 早稲田実業

・決勝戦(10月14日)
 佼成学園 56対6 早稲田学院

第50回全国高等学校アメリカンフットボール選手権大会(関東地区)

・2回戦(11月3日)
 佼成学園 43対23 慶應義塾(神奈川2位)

・準決勝(11月10日)
 佼成学園 28対17 立教新座(SIC1位)

・決勝戦(11月23日)
 佼成学園 35対21 法政大学第二(神奈川1位)

プロフィル

あいざわ・こういち 1956年、埼玉県生まれ。スポーツライターとして野球、サッカーはもとより、マスコミに取り上げられる機会が少ないスポーツも地道に取材。著書にアメリカンフットボールのチームづくりを描いた『勝利者―一流主義が人を育てる勝つためのマネジメント』(アカリFCB万来舎)がある。