弱小チームから常勝軍団へ~佼成学園高校アメリカンフットボール部「ロータス」クリスマスボウル3連覇の軌跡~(9) 【特別インタビュー】 文・相沢光一(スポーツライター)

大番狂わせの初優勝

――といいますと?

ロータスは学年に関係なく実力で出場する選手を決めていますが、チームを主導するのは3年生です。つまり学年ごとに実力も個性も微妙に異なるのですが、初優勝した代のチーム力を冷静に評価すると、関東大会を勝ち抜けるかどうか、というレベルでした。クリスマスボウルに行けるとしたらこの下の代、2年生のチームだと見ていたんです。

――2年生にいい人材が揃っていたということですね

佼成学園中学アメリカンフットボール部が全国優勝した時のメンバーが数多くいたんです。高校でも早い時期から試合に出ていて、実力には自信があるものだから、“クリスマスボウルで初優勝するのはオレたちの代だ”なんて公言するわけです。

2年生も悪気はないのですが、3年生からすれば、そんなことを言われるのはやはり面白くないわけですよ。でも、そうした反骨心が、いい方に働いたと思っています。強い相手との試合では選手たちが100%以上の実力を出し、ジャイアントキリングを見せてくれましたから。初優勝がかかった関学高との試合もその一つです。

――翌年の連覇を果たした代は実力があるうえ気持ちも強かったとのことですが、監督としても安心して見ていられるチームだったのですか?

そんなことはありません。日本一になると公言するくらいですから、向上心はあるし、練習でも我々が求める以上の内容を自らに課す。そこまではいいのですが、試合には“勝って当然”という気持ちで臨むんです。勝負事は何が起こるか分かりませんからね。思わぬミスが出るなどして試合が相手の流れになったら、自信が崩れ去ることもあり得るわけで、その辺が心配でした。また、彼らから見れば2年生の練習姿勢はもの足りなく映る。「お前らは甘い」などと厳しい言葉を掛けているのをよく見かけました。そのためチームの一体感に課題が残りました。

――学年の間には、そうした温度差のようなものがあるんですね

3年生には、その辺の課題を繰り返し話し、関東大会までに部員全員のベクトルを一致させたので連覇できましたが、安心して見ていられたわけではありません。

――3連覇をしたチームは、3年生から甘いといわれた代ですが、それでも勝ちました

甘いというのは上の代の評価であって、彼らは練習もしっかりやるし、実力も三連覇が十分狙えるレベルにあると私は見ていました。ただ、厳しい先輩が抜けてホッとしている部分があったんです。その課題が出たのがクリスマスボウルの立命館宇治高戦です。

――第1クオーターで21点の大差をつけられてしまった試合ですね

第2クオーターで反撃したものの24―14と10点差をつけられていました。ハーフタイムの時、私は彼らがこのスコアをどう受け止めているのか観察したんです。下を向くようだったら勝つのはきびしい、と。ところが“なんであんなイージーミスするんだよ”とか“しっかりプレーしろよ”などと言い合いを始めたんです。ケンカ腰でね。この代は確かに精神的に甘い部分はあった。でも、厳しい上の代に鍛えられてもいたわけで、劣勢になったことでその時の感覚がよみがえってアドレナリンが出たというか、闘う集団になったのだと思います。

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