弱小チームから常勝軍団へ~佼成学園高校アメリカンフットボール部「ロータス」クリスマスボウル3連覇の軌跡~(9) 【特別インタビュー】 文・相沢光一(スポーツライター)

高校アメリカンフットボール日本一決定戦『クリスマスボウル』が12月22日、横浜スタジアムで行われる。第50回を迎える節目の大会であるとともに、佼成学園高校「ロータス」にとっては4連覇へのチャレンジとなる重要な試合だ。しかも対戦相手は昨年、ロータスが大逆転で下した立命館宇治高校(関西代表校)。雪辱を期して並々ならぬ闘志でぶつかってくるに違いない。この“大一番”を、小林孝至監督はどんな心構えで戦おうとしているのか。話をうかがった。(聞き手・相沢光一)

複雑な心境で迎えた2016年のクリスマスボウル

――関東大会決勝では、法政第二高校との雨中の激戦を制し、4年連続でのクリスマスボウル出場を決めました

過去3年、ロータスはクリスマスボウルを制しているわけで、周囲からは「クリスマスボウルには出場して当然」という目で見られるようになりました。しかし、関東を勝ち上がって出場権を得ること自体、並大抵のことではありません。今は、それを果たしてホッとしています。

――その先にあるクリスマスボウルで勝つのは、さらに大変なことだと思います。まずは成し遂げた3連覇について語っていただけますか。2016年のクリスマスボウルは初出場にもかかわらず西の王者・関西学院高校(以下・関学高)を破って日本一を達成しました

実は関学高はロータスにとって「恩人」といえるチームなんです。ロータスは2001年の春から3年に1回の割合で関学高の合宿に参加させていただいています。この合宿参加が弱小だったロータスを変えるきっかけになり、その後の成長につながりましたから。

相沢氏

――合宿に参加するようになったいきさつは?

私が監督になってしばらく、ロータスは大会に出場してもすぐに負ける状態が続きました。一方、関学高はクリスマスボウル優勝回数最多(現在まで18回)を誇る高校アメリカンフットボール界きっての名門。強化のための環境、監督・コーチの指導、OBや父兄のバックアップ体制などすべてがトップレベルで、しかも洗練されている。私にとっても部員にとっても憧れの対象だったわけです。そんなチームを見ることは大きな刺激になると考え、関学高監督の中尾昌治先生に「部員と一緒に練習を見学させてください」とお願いしたのです。それを中尾先生は快く受け入れてくださっただけでなく「見学だけでなく、練習にも参加してください」と言われ、合宿が実現しました。

――ロータスの選手たちは、そこから多くのものを得たわけですね

一番の収穫は部員の意識が変わったことです。その頃のロータスにとって関学高は雲の上の存在。その選手たちと同じ練習をすること自体感激ですし、“オレたちもこの練習をすれば強くなれるんだ”と目標が明確になるわけです。

――実際、ロータスの成績を見ても2001年以降から上昇曲線を描くようになり、2016年はその恩人である関学高と日本一を争えることになりました

やっとここまで来られたかと感激しました。が、クリスマスボウルの直前、その思いが消え去るつらい出来事がありました。関学高の選手が試合中のアクシデントで亡くなったのです。関学高の選手たちが受けたショックは大きく、クリスマスボウル出場を辞退するのではないか、といわれたほどです。でも、立派だったのはそのあと。深い悲しみの中にあっても試合にはきっちりとチームを仕上げて来たのです。

小林監督

――厳しい試合になったのですね

その関学高に勝ったのですから、ウチの選手たちを心から褒めたいと思いました。とはいえ、試合後も複雑な心境でした。関学高の選手たちの気持ちを考えると、大喜びはできないわけです。ウチの選手もその辺は分かっていて、努めて淡々としていました。

――そんな風に相手のことを思いやれるのもロータスの選手らしいと思います

監督の私が言うのもなんですが、2016年の日本一は奇跡に近いことだったと思っています。

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