弱小チームから常勝軍団へ~佼成学園高校アメリカンフットボール部「ロータス」クリスマスボウル3連覇の軌跡~(8) 文・相沢光一(スポーツライター)

統制が厳しくなりがちな日本のスポーツ界で、アメリカンフットボールを好きになり、プレーを楽しむことで部員の主体性を育む文化が「ロータス」に根付いた。日本一に登り詰めたロータスのチーム力は、小林孝至監督一人が生み出したものではない。そこには、大勢の協力者の存在があった。

OB会とコーチ陣の存在

ロータスを支える存在の一つがOBたちだ。強豪校には強固なOB会があり、部の環境整備のための寄付を集めるなど、さまざまな援助をする。部にとっては頼りになる存在だが、時として、監督の指導法に異を唱えたり、部員の練習態度を批判したりと抵抗勢力になることもある。監督や部員は常にOBの目を気にしなければならず、強豪校ではOBを含めた縦社会が形成されている例も少なくない。

だが、ロータスにそのようなOBは見当たらない。大半のOBは、弱小だった頃の部員であり、都大会でも大学付属の強豪校に大差負けする屈辱を味わってきた。進学校であることの限界も痛感しており、卒業後も強くなることは期待していなかったそうだ。

しかし、関東の強豪に数えられるまでになったここ10年、そして2016年にはクリスマスボウルに初出場し初制覇、さらには3連覇の偉業まで成し遂げてしまった成長ぶりには皆が舌を巻く。OBたちに今のロータスの話を聞くと、誰もが笑顔になり「夢のようです」と答える。だからこそ、小林監督の指導に全幅の信頼を置き、寄付などの援助も惜しまない。試合では、チームカラーの赤のTシャツを着て応援に熱を注ぐ。

OBの中には、小林監督と同様に大学や社会人までアメリカンフットボールを続けた人たちがいて、ボランティアでロータスの指導に当たっている。平日は仕事のため来られないが、週末の練習には必ず顔を出し、自らが経験した高いレベルのスキルを伝えている。

特にクリスマスボウル出場と制覇の力になった「連覇」というキーワードを小林監督に進言した関孝英コーチ、井上怜ヘッドコーチ、オフェンスラインを見る小池宏昌コーチも監督の片腕的存在だ。この4人の指導体制がロータスの強さを支えている。

小林監督の人柄も指導方針も熟知している3人のコーチは、監督同様に部員を見守るスタイルの指導に徹している。ゲームの原理原則を理解し、忠実にアサイメントを実践することでプレーの成功率を高める理詰めの指導で、チーム力の向上を促す。

また、部員たちのモチベーションを高めることも怠らない。その一つが、試合でのプレーの評価である。ロータスでは、試合で好プレーをした選手に「プライズ」という蓮の花をモチーフにしたシールを授与する決まりがある。

いわば褒賞で、授与された選手はそれをヘルメットに貼り、誇りとするのだ。アメリカンフットボールではポジションごとに役割が明確に分けられているが、活躍が目立つのは攻守共にボールに関与する選手に限られる。観客の目に留まりにくい、ボールに絡まないポジションでもいい働きをしている選手は当然いるが、彼らは得てして目立てない存在だ。10代後半の高校生には、目立つ活躍をしてヒーローになりたいという思いだってあるだろう。が、地味なポジションの選手たちは、その思いが満たされずモチベーションを保ちづらい。小林監督をはじめコーチ陣は、そうした選手たちの頑張りも決して見逃さず、「プライズ」を授与することでプレーを評価しているのだ。

「全員がシールをヘルメットに貼ることを励みにしています。勝利に貢献するプレーをした手応えがあるのに、もらえなかった時は『なぜですか?』と聞きにくる部員もいるほどです。その場合は納得してもらえるまで説明します」と小林監督は語る。こうしたエピソードは高校生らしくてほほ笑ましい。

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