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「時代」の声を伝えて――文学がとらえた80年(25)最終回 文・黒古一夫(文芸評論家)

「文学の役割」を考える――「『時代』の声を伝えて」を終えて

昨年1年間、本紙デジタル上で月に2回、70年以上にわたる「戦後」の文学史の中から、その時々の社会状況や問題に深く切り込む小説を取り上げて論評してきた。そこで改めて確認できたことがいくつかあった。まずは、私の思想遍歴を挙げながら、そのことに触れさせて頂く。

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TKWO――音楽とともにある人生♪ コントラバス・前田芳彰さん Vol.3

東京フィルハーモニー交響楽団(東フィル)でプロの演奏家として歩み出した前田芳彰さんは、オーストリア・ウィーンへの留学を経て、フリーでの活動を決意した。最終回となる今回は、東京佼成ウインドオーケストラ(TKWO)との出合い、そして、自らの演奏に懸ける思いについて聞いた。

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「時代」の声を伝えて――文学がとらえた80年(24)番外編8 文・黒古一夫(文芸評論家)

ユートピアを求めて(8)――「沈黙」の先に現れてくるものは……

この連載の2回目に、2011年3月11日の東日本大震災後に起こった「フクシマ」(東京電力福島第一原子力発電所の事故とその被害)に触発されて書かれたディストピア(反ユートピア)小説の代表として、北野慶の『亡国記』(2015年)を取り上げた。

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男たちの介護――(3) 山田房雄さんの体験を読んで 津止正敏・立命館大学教授

ケアマネジャーなど公的サービスを活用 体験を肯定し、今後の人生を支える糧に

2週にわたり、山田房雄さん(81)=仮名=の介護体験をリポートした。妻をみとった山田さんの体験を立命館大学の津止正敏教授(社会学)に、いま一度振り返ってもらった。

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TKWO――音楽とともにある人生♪ コントラバス・前田芳彰さん Vol.2

部活に入らなければ強制的に園芸部に入らされる――そうした状況を回避するため、中学校では籍だけを吹奏楽部に置こうと決めたが、先輩からコントラバスの担当を命令された前田芳彰さん。今回は、音楽にのめり込み、上京してコントラバスを突き詰めようとの思いに至ったきっかけ、その後、プロの音楽家になった時に感じたことなどを聞いた。

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男たちの介護――(2) 50年間連れ添った妻が脳腫瘍に 突然始まった介護

辛抱強いなぁ、ユキは……

妻をトイレに連れて行こうとした時だった。妻の足が前に進まず、夫婦で廊下に倒れ込んだ。山田房雄さん(81)が妻で1歳年下のユキさんの介護にあたったのは5年前、期間は1年間だった。「もう私の力ではどうにもならん。竹中さん(竹中とみこさん・63歳)に電話するよ」。竹中さんは、週に何度も心配して山田家に様子を見に来てくれる主任さんである。

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TKWO――音楽とともにある人生♪ コントラバス・前田芳彰さん Vol.1

日本トップレベルの吹奏楽団として知られる東京佼成ウインドオーケストラ(TKWO)。演奏会をはじめ、ラジオやテレビ出演など、多方面で活躍する。長年、全日本吹奏楽コンクールの課題曲の参考演奏を行っており、特にコンクールを目指す中学生・高校生の憧れの存在でもある。今回は、TKWOのメンバーで唯一の弦楽器を担うコントラバス奏者の前田芳彰さん。管弦楽団に所属していた経歴もある前田さんに、コントラバスの特徴や役割、さらに楽器との出合いや音楽の道に進んだきっかけなどを聞いた。

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男たちの介護――(1) 50年間連れ添った妻が脳腫瘍に 突然始まった介護

心身ともに限界を感じ

自転車を点検した。妻が言った不具合は見つからない。買い物から帰ってきた妻からこう頼まれたのだ。「帰り道、ハンドルがグラグラしたから見てほしい」。ハンドル部分をもう一度調べてみたが、やはり異常は見つからなかった。「おーい、大丈夫だぞ」「おかしいわね。グラグラしたんだけど」。平成24年12月、東海地方に暮らす山田房雄さん(81)と、1歳年下の妻・ユキさんとのやりとりである。この些細(ささい)な出来事が、なぜか房雄さんの心に焼きついた。

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「時代」の声を伝えて――文学がとらえた80年(23)番外編7 文・黒古一夫(文芸評論家)

ユートピアを求めて(7)――本当の「豊かさ」とは?

これまでにも何度か言及してきたように、近代あるいは戦後の日本は、「豊かさ」を求めて必死に走り続けてきたと言っても過言ではない。それは1960年代半ばに流行った「エコノミック・アニマル」という言葉が象徴しているし、GDP(国民総生産)世界第二位(現在は第三位)は、その見事な結果であった。

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男たちの介護――プロローグ 津止正敏・立命館大学教授に聞く

妻や両親の介護を一人で背負う男性は少なくない。年齢的にも高齢の人たちだ。助けを求めたくても、子供たちは遠くに住んでいたり、子供に迷惑は掛けられないといった遠慮が働いたりするからなのだろうか。男性介護者を孤立から守るにはどうすればよいのか、連載を通し探っていきたい。プロローグとして男性介護者が置かれている実情と課題を立命館大学の津止正敏教授(社会学)に聞いた。

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