ちょっと軽く、ストレッチしてみましょう(10.寝違え) 加瀬剛(スポーツトレーナー、佼成学園高アメフット部ヘッドトレーナー)

筋肉を伸ばし過ぎる、または、伸ばし続けると筋肉が“故障”します。この“故障”とは、具体的に言うと、炎症が発生している状態です。よって、炎症を起こしているのに、さらに温めると症状は悪化し、痛みは強くなってしまいます。こうした時に、まず冷やす(アイシングする)ことが大事になります。

冷やすことで炎症が治まってきたら、次に伸び切った筋肉を縮めなければなりません。

筋肉は伸ばされることで炎症を起こし、硬くなります(第1回参照)。その硬くなった筋肉を縮めようとすると痛みを感じますが、ゆっくりと時間をかけて縮めることで症状は改善します。この時に発生する痛みは、症状が改善するための痛みと思ってください。

筋肉に痛みを感じたり、こわばった感覚があったりすると、つい伸ばしたくなります。しかし、この行為は逆効果になるので気をつけてください。後頭部を両手で抑えて頭を前に無理に下げて首を伸ばしたり、痛い方を伸ばしたりしてはいけません。「その場は気持ちが良いだけ」で、症状は改善されるどころか悪化してしまいます。

さて、「寝違え」で主に炎症を起こす筋肉は「肩甲挙筋(けんこうきょきん)」です。

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今回はこの筋肉を縮めるための運動とキネシオテーピングをご紹介します。この筋肉は運動して縮めても、寝てしまうとまた伸びて(伸ばして)しまうことがあります。

そのため、日中は症状が少し改善したとしても、朝起きるとまた痛くなるのが「寝違え」のもう一つの特徴でもあります。

何度も繰り返し伸ばしてしまうと痛みは悪化し、ひどい時は首が全く動かなくなります。そのため、1週間以上も症状が改善されないこともあるのです。

無意識とはいえ、この筋肉が伸ばされないように、「寝方」を工夫するなどして、注意しなければなりません。また、症状が悪化しないように患部をよくアイシングし、誤ったストレッチをしないよう、注意してください。


次回は“ぎっくり腰”についてお話しします。

プロフィル

かせ・つよし 1968年、東京生まれ。獨協大学外国語学部英語学科、自然カイロプラクティック学院、米国ニューメキシコ大学アスレチックトレーナー学科、日本医学柔整鍼灸専門学校をそれぞれ卒業。現在、キネシオ接骨院(http://kinesio-sekotsu.com/)院長として患者の治療にあたるほか、キネシオテーピング療法の普及に尽くす。母校である佼成学園高校アメフット部「ロータス」のヘッドトレーナーとして、2016年からの同チーム全国大会3連覇に貢献した。著書に『キネシオテーピング・アスレチックテーピング併用テクニック』(スキージャーナル)、『勝つための最強体幹力メソッド 』(創藝社)。