ちょっと軽く、ストレッチしてみましょう(特別編 冬の「熱中症」対策) 加瀬剛(スポーツトレーナー、佼成学園高アメフット部ヘッドトレーナー)

イラスト・林 宏之

朝晩の冷え込みが厳しい冬真っただ中。この時期に、気をつけなければならないのが、暑い時期と同じくらい発症の多い「熱中症」だ。佼成学園高校アメリカンフットボール部「ロータス」のヘッドトレーナーを務め、接骨院の院長として患者の治療にあたる加瀬剛氏が、冬の熱中症の仕組みと対策、自宅で簡単にできる運動を紹介する。

寒い季節にも意外と多い「熱中症」

「熱中症」は暑い季節に起きると思われがちですが、寒い季節でも同じくらい発症しやすいことをご存じでしょうか? 熱中症は、熱が体外に放出できずに体内にたまり、体温が下がりにくくなって体が異常をきたしたときに発症します。一番の原因は、「体が脱水状態になる」ことです。

寒い季節には、暑い季節と比べて汗をかきません。しかし、空気が乾燥するこの時期は体の表面から水分が蒸発し、相当量の水分が失われます。また、汗をかかないため“水分摂取”に対する意識も低下しがちです。体の水分が失われ、補給もされない状態のまま、暖房の効いた部屋にいたり、こたつで暖を取ったり、長時間の入浴をしたりすると、体外に熱が放出できなくなり、寒い季節でも熱中症を発症するのです。

成人の体は、55~60%が水分で、このうち、2%減ると喉の渇きを感じ、3%が失われると意識がぼんやりして食欲が減退します。4%の減少で疲労感に襲われ、5%の水分が失われると頭痛、発熱の症状が現れ始めます。さらに進んで、10%の喪失でけいれんや失神を起こし、20%もの量が失われると、いよいよ生命に危険が生じます。例えば体重が50キロの人であれば、600ミリリットルの水分が体から失われるだけで、脱水症状が始まっているとされる「喉の渇きを感じる」レベルに達しますから、注意が必要です。

足のむくみを気にして水分摂取を控えるという女性がいますが、それは逆効果です。水分を取らないと血はドロドロになり、血液循環が悪くなって、さらにむくみが進行します。冷えの原因にもなりますので気をつけてください。

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