ちょっと軽く、ストレッチしてみましょう(5.不眠症) 加瀬剛(スポーツトレーナー、佼成学園高アメフット部ヘッドトレーナー)

まず、神経は脳や脊髄にある“中枢神経”と体の全体にある“末梢(まっしょう)神経”に分けられます。そして末梢神経は“体性神経”と“自律神経”に分けられます。

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体性神経は、体を動かしたり、痛み、かゆみを感じたりする神経で、自分である程度コントロールができるものです。逆に自分ではコントロールできないのが自律神経で、交感神経(こうかんしんけい)と副交感神経(ふくこうかんしんけい)の二種類に分けられます。

簡単に説明すると、交感神経は体を興奮させる神経であって、副交感神経は体をリラックスさせる神経です。

交感神経が緊張し、気持ちの高ぶった状態が安静時にも持続してしまうと体を休めることができなくなり、リラックスした状態とのバランスが崩れる――交感神経と副交感神経のバランスが崩れることを自律神経失調症といいます。

自律神経失調症になった場合、寝る前に「心を落ち着かせる」「テレビやパソコンなど、目に刺激を与えるものを見ない」「部屋を暗くする」「お風呂に入って体を温めておく」「ストレッチをして体をほぐす」「温かいものを飲む」など、さまざまな改善法がありますが、効果は人によって変わります。

今まで不眠症で悩む多くの患者さんを診ていますが、そんな患者さんたちに共通しているのは、姿勢が悪く、特に“猫背姿勢”を取っている方が多いということです。

猫背姿勢とは、長時間のデスクワークやスマホ操作をすることで慢性的に背中が伸ばされている状態をいいます。この時、背骨まわりの筋肉の緊張(張り)と、「皮膚と筋肉の癒着」がとても強くなっています。背骨の上や背骨に沿った筋肉(脊柱起立筋)の上の皮膚を軽くつまむだけで、悲鳴を上げてしまうくらい痛みを感じる患者さんも少なくありません。

背中が丸まっている猫背姿勢が長く続くと、筋肉と同時に自律神経も伸ばされてしまいます。この状態だと交感神経が緊張(興奮)したままになり、先述したように睡眠に悪影響を及ぼすわけです。

緊張した交換神経をほぐし、背骨と筋肉をリセットするエクササイズ、およびキネシオテーピングをご紹介して今回のお話を終わりたいと思います。

日頃から寝る前にエクササイズやテーピングをして、背中の張りをとって快適な睡眠がとれるようにしていきましょう!


次回は坐骨神経痛についてお話しします。

プロフィル

かせ・つよし 1968年、東京生まれ。獨協大学外国語学部英語学科、自然カイロプラクティック学院、米国ニューメキシコ大学アスレチックトレーナー学科、日本医学柔整鍼灸専門学校をそれぞれ卒業。現在、キネシオ接骨院(http://kinesio-sekotsu.com/)院長として患者の治療にあたるほか、キネシオテーピング療法の普及に尽くす。母校である佼成学園高校アメフット部「ロータス」のヘッドトレーナーとして、2016年からの同チーム全国大会3連覇に貢献した。著書に『キネシオテーピング・アスレチックテーピング併用テクニック』(スキージャーナル)、『勝つための最強体幹力メソッド 』(創藝社)。