ちょっと軽く、ストレッチしてみましょう(11.ぎっくり腰) 加瀬剛(スポーツトレーナー、佼成学園高アメフット部ヘッドトレーナー)

筋肉が関係している「ぎっくり腰」の正式名称は「筋・筋膜性腰痛症(きん・きんまくせいようつうしょう)」といいます。腰の「ぎっくり腰」とそれを取り囲む“筋膜”を損傷することで発症する腰痛です。

関節、特に骨盤にある仙腸関節(せんちょうかんせつ)が原因で起こる「ぎっくり腰」は、立つことも寝返りを打つこともできないほど強い痛みがあります。これに対し、筋肉と筋膜が原因の「ぎっくり腰」は、やはりとても強い痛みを伴いますが、何とか動くことはできるのが特徴です。

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ただし、「動けるから…」という自己判断で放っておくのは禁物です。必ず専門医に診察してもらってください。

さて、話を筋肉が原因で起こる「ぎっくり腰」に戻しましょう。

前に屈(かが)む動作をすると痛いのか、もしくは後ろに反る動作で痛いのか――この違いによって患部となる筋肉や筋膜が違ってきます。

前に屈む時に強い痛みが出る場合、多くは腸腰筋(ちょうようきん)が関係しています。後ろに反る動作の時は、腰方形筋(ようほうけいきん)が多く関係しています。また、前後の両方向で痛みが出る場合は、この二つの筋肉が関係していることがあります。

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痛みが強い場合は、炎症が大きいので温めてはいけません。

このシリーズで何度もお伝えしていますが、筋肉は伸ばされることで炎症を起こし、痛みが発生します(第1回参照)。そして、伸びた筋肉を縮めようとする時にも痛みが出ます。

熱いお風呂にゆっくり入っていると、その時はとても気持ちが良く、痛みが軽減したように感じることがありますが、後で痛みがより強く出る場合もあります。十分に注意してください。

◇腰を前に折り曲げる時に痛みを感じる場合は、「腸腰筋」に炎症が発症している可能性が高い
◇腰を後ろに反ったり、横に側屈するときに痛みを感じる場合は、「腰方形筋」に炎症が発症している可能性が高い

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