ちょっと軽く、ストレッチしてみましょう(3.腰痛) 加瀬剛(スポーツトレーナー、佼成学園高アメフット部ヘッドトレーナー)

生まれたばかりの赤ちゃんを例にお話ししましょう。生まれてきたばかりの赤ちゃんは首がすわっていませんが、それは首の筋肉が発達していないからでしょうか?

違います。

胎児はお母さんのおなかの中で、首も手も足もよく動かします。つまり、生まれてくる時には首の筋肉はすでに発達しているのです。しかし、ある機能に関する筋肉は、「お母さんのおなかの中」という条件があるために未発達のまま生まれてきます。

それは呼吸に関わる筋肉です。おなかの中で胎児は、へその緒でお母さんとつながっていて酸素が送られてくるので、呼吸をする必要がありません。よって腹筋(腹横筋)が未発達なのです。

では、赤ちゃんはどうやってこの腹筋(腹横筋=インナーマッスル)を鍛えるのでしょうか? 赤ちゃんが汗をかきつつトレーニングしている姿は想像できませんよね(笑)。

実は、赤ちゃんは泣くことで鍛えるのです。よく見てみると、赤ちゃんは泣く時におなかを膨らませたり、へこませたりしています。「泣く子は育つ」「赤ちゃんは泣くことが仕事」と昔からいわれますが、本当にその通りだと思います。

「うちの子は泣かなくて、とても良い子なのですが、なかなか首がすわらなくて……」と悩む親御さんがいらっしゃいます。赤ちゃんはオッパイとオムツ以外では適度に泣かせてあげなければなりません。泣いたからすぐに抱っこ、をしてしまうと、赤ちゃんの“大切な筋トレ時間”を奪ってしまうことにもなりかねません。

「腹横筋」は、おへそに力を入れることで意識できる筋肉です。実際におへそに力を入れてみると、背筋が“ピーン”と伸びるのが感じられるはずです。 「腹横筋」が鍛えられることで、それに関係する他のインナーマッスルも丈夫になり、骨盤が正しい位置になります。すると背骨が正しい位置になり、赤ちゃんであれば、それによって首がすわるようになるのです。

泥酔した人の姿勢を想像してみてください。おなか(腹横筋)に力が入っていないと骨盤が後傾し、猫背になり、首が前にうなだれてきます。首がすわっていない生まれたばかりの赤ちゃんと同じです。

赤ちゃんは3カ月間ほどの“泣きトレ”で、このインナーマッスル(腹横筋)を鍛えます。大人も数カ月の“泣きトレ”をすれば鍛えられますが、なかなかそういうわけにはいきませんよね。

今回の動画では、日頃のわずかな時間でできるインナーマッスルトレーニングと、腰痛を緩和するキネシオテーピングのご紹介をします。難しいことはないので、気軽に続けてみてください。


次回は “ふくらはぎのつり”についてお話しします。

プロフィル

かせ・つよし 1968年、東京生まれ。獨協大学外国語学部英語学科、自然カイロプラクティック学院、米国ニューメキシコ大学アスレチックトレーナー学科、日本医学柔整鍼灸専門学校をそれぞれ卒業。現在、キネシオ接骨院(http://kinesio-sekotsu.com/)院長として患者の治療にあたるほか、キネシオテーピング療法の普及に尽くす。母校である佼成学園高校アメフット部「ロータス」のヘッドトレーナーとして、2016年からの同チーム全国大会3連覇に貢献した。著書に『キネシオテーピング・アスレチックテーピング併用テクニック』(スキージャーナル)、『勝つための最強体幹力メソッド 』(創藝社)。