ちょっと軽く、ストレッチしてみましょう(3.腰痛) 加瀬剛(スポーツトレーナー、佼成学園高アメフット部ヘッドトレーナー)

「体幹を鍛えることで当たり負けない体をつくる」をモットーに、佼成学園高校アメリカンフットボール部「ロータス」の全国大会3連覇に貢献したスポーツトレーナー加瀬剛氏。日頃は、接骨院の院長として、一般の人々のケアにも当たっている。体の構造を知り、毎日をしなやかに過ごすにはどうすればいいか――体の専門家としてアドバイスする。(※ケアの方法を動画で紹介)

腰痛と腹筋の関係

さまざまな要因で起こる“腰痛”。今回はオーソドックスな腰痛の原因とその対処についてお話しします。

「腰痛を治したいのであれば腹筋を鍛えなさい」ということをよく耳にする方も多いと思います。確かに、腹筋を鍛えることは腰痛予防になりますが、板チョコのようにくっきり割れている腹筋を持つアスリートが、結構な割合で腰痛に悩んでいるのをご存じですか?

皆さんが“腹筋”と聞いてすぐに思い浮かべるのは、俗に「シックス・パック」と呼ばれる「腹直筋」のことです。しかしこの筋肉、鍛え上げた時の見た目は格好良いのですが、腰痛予防にとってはあまり関係がない筋肉なのです。

腰痛の予防と関連する腹筋は、「腹横筋」という腹まわりの“奥深く”にある天然のコルセットのような筋肉になります。これを鍛えることで腰痛を緩和することができるのです。

この筋肉はインナーマッスルの一つであり、体幹に当たります。あらゆる動作を行うのに必要不可欠な筋肉です。

インナーマッスルとは:人体の深い部分にある小さい筋肉のことで、関節の保護などの役割を果たしている。筋力トレーニングがしにくい筋肉。
腹横筋の主な役割:激しい運動中の呼吸補佐、内臓のポジション安定、咳(せき)、排便補助など。

腰痛のオーソドックスな発生メカニズム

先述した、コルセットの役割をしている「腹横筋」が衰えてくると、骨盤が後ろ(背中側)に傾き始めます。そうすると、足の付け根から骨盤につながっている「腸骨筋」と、同じく足の付け根から今度は背骨につながっている「大腰筋」(二つを合わせて「腸腰筋」と呼ぶ)が伸びてしまいます。

「腸腰筋」が伸びると骨盤が後傾し、背中が丸くなります。正しい姿勢を保とうとするために腰を反らせるようになり、腰まわりの筋肉や筋に負担がかかり、痛みが発生するのです。

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