寄稿(連載)

共生へ――現代に伝える神道のこころ(9) 写真・文 藤本頼生(國學院大學神道文化学部准教授)

工匠の技により築き上げられた「文化共存の姿」を後世に継承し

やや旧聞に属するが、令和三(二〇二一)年二月十三日付の「毎日新聞」朝刊に、岡山県岡山市北区にある国宝・吉備津神社拝殿や県指定文化財の廻廊(かいろう)に傷を付けた男性が、文化財保護法違反の疑いで逮捕されたとの報道があった。平成二十七(二〇一五)年にも十六府県四十八カ所の社寺の楼門(ろうもん)や柱、賽銭箱(さいせんばこ)などにお清めと称して油をまいた行為により、日本国籍を持つ米国在住の医師の男性が建造物損壊容疑で逮捕されたことがあった。社寺のように古くから人々に信仰され、我が国の伝統文化を継承するものとして大切にされてきた伝統的建造物を損壊、汚損する行為は決して許されるものではない。

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現代を見つめて(66) 「事実のない世界」 文・石井光太(作家)

「事実のない世界」

フィリピンのインターネットメディア「ラップラー」のマリア・レッサ代表が、本年度のノーベル平和賞を受賞した。

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利害を超えて現代と向き合う――宗教の役割(56) 文・小林正弥(千葉大学大学院教授)

不公正な選挙と正義を軽んじる布陣

公正な社会をつくっていくには、まず政治が公正や正義に立脚しなければならない。総選挙を前に、現在の状況を踏まえて、そのことを改めて論じてみたい。

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共生へ――現代に伝える神道のこころ(8) 写真・文 藤本頼生(國學院大學神道文化学部准教授)

神前を守護するさまざまな「神使」 地域神社の由縁や人々の祈りが形に

地域神社の調査を行うと、個々の神社の境内にある建物や鳥居、灯籠、狛犬(こまいぬ)など工作物のわずかな差異に驚かされることがある。

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現代を見つめて(65) 教育が未来をつくる 文・石井光太(作家)

教育が未来をつくる

アフガニスタンの政権がタリバンの手に渡った。タリバンは国内で一定の支持を得ている一方、女性の権利を剝奪(はくだつ)しかねないなど負の側面も懸念されている。

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利害を超えて現代と向き合う――宗教の役割(55) 文・小林正弥(千葉大学大学院教授)

“コロナ敗戦”の政治的因果

東京の感染者数は、東京五輪開催中から急上昇して医療崩壊が生じ、ついに日本の感染状況は世界の中でも有数の水準に達してしまった。自宅などで死亡した感染者も当然増え、8月には全国で250人、都内だけで112人確認された(朝日新聞=9月13日、TBSニュース=9月14日)。

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共生へ――現代に伝える神道のこころ(7) 写真・文 藤本頼生(國學院大學神道文化学部准教授)

元気な子供の声が聞こえてくる 鎮守の森・神社での「人間教育」

埼玉県越谷市越ヶ谷に大国主命(おおくにぬしのみこと)、言代主命(ことしろぬしのみこと)を主祭神としてお祀(まつ)りする久伊豆(ひさいず)神社という古社がある。創建時期は不詳とされるが、平安中期以降から旧武蔵北部を中心に、武士や庶民の信仰を集めてきた社(やしろ)である。境内の片隅には「平田篤胤仮寓跡(ひらたあつたねかぐうあと)」と呼ばれる旧跡や篤胤奉納の大絵馬があることで知られ、国学者の平田篤胤とも由縁の深い社でもある。現・越谷市の中核となった旧・四丁野村、越ケ谷宿、大沢町、瓦曽根(かわらぞね)町、神明下村、谷中村、花田村の七カ所の鎮守の社として知られている。加えて八方除(はっぽうよけ)、除災招福の霊験あらたかな神社として有名で、祈願のために関東一円のみならず、遠方から参詣する崇敬者も多い。

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現代を見つめて(64) 依存症からの脱却 文・石井光太(作家)

依存症からの脱却

東京五輪以降、日本各地で緊急事態宣言が延長されたり、まん延防止等重点措置が新たに適用されたりすることで、外出自粛の空気が高まっている。そうした中で急増しているのが、「インターネット・ゲーム依存」だ。

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利害を超えて現代と向き合う――宗教の役割(54) 文・小林正弥(千葉大学大学院教授)

東京オリンピックのメダルラッシュを祝えるか?

東京五輪が開催され、閉幕した。テレビは競技と日本のメダルラッシュにのみ焦点を合わせていたが、私たちは表面的な賑(にぎ)わいに惑わされずに、その陰で進行している現実を正しく直視しなければならない。仏教で言う正見だ。

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共生へ――現代に伝える神道のこころ(6) 写真・文 藤本頼生(國學院大學神道文化学部准教授)

少子高齢化の進行と過疎化に伴い、地域の宗教施設が直面する課題

現代の日本は少子高齢化が進行しており、同時に地方では過疎化の問題が深刻化している。厚生労働省が毎年九月に発表する人口動態調査の直近の概況では、一昨年の新規出生数が前年比で5万3161人減少して、過去最少の86万5239人であったという報道がなされた。小生は大学教員でもあるので、後に子供たちを学生として受け入れることになる大学側の立場としては、特にコロナ禍の中にあって昨年一年間の新規出生数が今年の発表から、今後どのように変化してゆくのか、18歳人口の増減とともに気になる話でもある。

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