寄稿(連載)

共生へ――現代に伝える神道のこころ(13) 写真・文 藤本頼生(國學院大學神道文化学部准教授)

民間信仰で奉斎される石碑や石塔 我が国における神々の共生の姿が

地域神社の調査でまちあるきをしていると、今でもふと、路傍の石碑や石祠(せきし)、石像などに目を奪われることがある。小生が幼い頃、お盆に家族でお墓参りをした帰り、村境にあった石碑の存在が気になったことがあった。その石碑が何であるかを父に尋ねると、それは「サイの神さん(サイノカミ)だよ」と教えてくれた。さらに父は、石碑の近くに据え置かれていた力石(ちからいし)の意味合いに触れ、かつてこの石を用いてムラの力持ちを決めるために、村の若者らが集まって力試しを行い、その様子を見物する人々で賑(にぎ)わっていたという民俗行事の様子をも付け加えて話してくれたのを思い出す。

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現代を見つめて(69) つながりと孤立 文・石井光太(作家)

つながりと孤立

昨年日本は、イギリスに次いで世界で二番目となる「孤独・孤立対策担当大臣」を設けた。様々な社会問題の根っこに孤独・孤立があるとし、予防と解決に向けて動き出したのだ。

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利害を超えて現代と向き合う――宗教の役割(60) 文・小林正弥(千葉大学大学院教授)

ついに代表的なコロナ感染国となった日本

前回(第59回)では、新年に合わせて「栄福社会」という明るいビジョンを描いたが、それ以後、懸念したとおりにオミクロン株は猛威を振るい、日本社会を席捲(せっけん)している。東京における私たちの周辺でも、次々と幼稚園や学校などの施設で感染報告や休園・休校などが相次いでいる。一日の新規感染者数は全国で10万人前後というように、第5波までとは桁違いの多さになっている。

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共生へ――現代に伝える神道のこころ(12) 写真・文 藤本頼生(國學院大學神道文化学部准教授)

相撲の歴史と神道の関わりをひもとく 五穀豊穣を祈念し、豊凶を占う神事

毎年、新春の初詣が一段落つく頃になると、明治神宮の拝殿前で大相撲の横綱力士による「手数入(でずい)り」と呼ばれる奉納土俵入りが行われる。コロナ禍で昨年は中止されたものの、毎年一月五日から八日頃の、大相撲の初場所前に実施される行事で、本年は場所後の二月一日に行われた。テレビのニュース番組等で報道され、また、三月の大阪場所後の春巡業に際しても伊勢神宮や靖國神社で奉納されているので、読者にはご存じの方も多いだろう。

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現代を見つめて(68) 他者の声を聴く 文・石井光太(作家)

他者の声を聴く

二〇二二年は寅年(とらどし)だ。みなさんが、今年もらった年賀状の虎の絵は何色で描かれているだろうか。

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利害を超えて現代と向き合う――宗教の役割(59) 文・小林正弥(千葉大学大学院教授)

明暗を超えて栄福の時代へ――二極化と価値観の変化

危惧していたように、やはり第6波が始まり、オミクロン株の脅威も身近に迫りつつある。さほど深刻にならずに正月を祝えた地域が多かったのは、せめてもの幸いだった。昨年は1月8日に緊急事態宣言が出たわけだから、ほぼ同じ時期に感染急増が繰り返されているわけだ。私たちは再び不要な外出を控え、徳をもって行動を自制し、最大限の自衛をしなければならない。

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共生へ――現代に伝える神道のこころ(11) 写真・文 藤本頼生(國學院大學神道文化学部准教授)

あらゆる場所に神を祀り安寧を願う 現代社会における鎮守の神の在り方

明治四十五(一九一二)年、文部省発行の『尋常小學唱歌(第三學年用)』(音楽教科書)に掲載された「村祭」の歌詞の冒頭に、「村の鎮守」という言葉が登場する。「村祭」は、GHQ(連合国軍総司令部)による占領下の昭和二十二(一九四七)年に三番の歌詞の一部に改変がなされたものの、戦後も長く歌い継がれてきた唱歌であり、読者の方の中にもかつて、小学校時代にこの唱歌に触れた方がいるだろう。

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利害を超えて現代と向き合う――宗教の役割(58) 文・小林正弥(千葉大学大学院教授)

子供をどのように育てますか?

年の瀬が迫ってきた。思えば今年の新年には今後の明暗双方について書いた(第47回)が、その後はほとんど「コロナ禍」という暗面に焦点を合わせざるをえなかった。現在、オミクロン株が世界中の懸念事項になっており、自国への流入・拡大防止策が焦眉の急だが、日本のコロナ感染状況自体は小康状態にある。

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共生へ――現代に伝える神道のこころ(10) 写真・文 藤本頼生(國學院大學神道文化学部准教授)

いつの時代も感染症の厄難に対し、防疫を願う人の心に寄り添う神社

今年のお正月の初詣は、例年の光景とは大いに異なる様相であった。明治神宮や成田山新勝寺、川崎大師などをはじめ、東京や大阪、京都など各地の有名な社寺で「一月一日の参拝者が昨年比で何割減少した」などと、社頭の様子を新聞やテレビ等のマスメディアが報じた。昨年一月末から続く新型コロナウイルスの感染拡大は、従来の元日風景までも一変させたのである。例年、三が日の参拝者が三百万人を超える明治神宮では、新型コロナウイルスの感染防止策の一つである「密」を避けるために、大晦日(おおみそか)の夜から元旦までの夜間閉門が実施されたことは、読者の方々も記憶にあるだろう。

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現代を見つめて(67) 地球の非常事態 文・石井光太(作家)

地球の非常事態

先ごろ、イギリスで国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)が開催された。これに参加した環境活動家のグレタ・トゥーンベリさん(18)が、次のような言葉を発した。

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