幸せのヒントがここに――仏典の中の女性たち(6) 文・画 天野和公(みんなの寺副住職)

ヴィサーカーはその後も生涯をかけて僧団に袈裟(けさ)、食事、薬などをお布施し続けました。

のちに東園と呼ばれる大規模な僧院を寄進します。僧院が完成した当日、あまりのうれしさを隠しきれずはしゃぎ回るヴィサーカーを見て、弟子たちが不審がりました。「彼女はおかしくなったのでしょうか?」。「心配ない。ヴィサーカーは前世からの願いがこの世で次から次へとかなって喜んでいるだけだ」。お釈迦さまはそう答えられ、次の偈文を説きました。

『摘み集められた花から多くの花輪が作られるように、死ぬべき運命として生まれた人間は、多くの善を行うべきである』(法句経53)

ヴィサーカーは一生を家庭の主婦として過ごした女性ですが、その信念ある生き方はお釈迦さまも称賛するものでした。彼女は長寿で多くの子孫にも恵まれましたが、孫娘が急死するなどつらい体験もしています。楽しいことも苦しいことも隣り合わせの人生の中で、善い行いを実践し、たくさんの花を咲かせた人生。

私たちも、小さな種をまきながら歩きましょう。デコボコの道のりを振り返った時、その足跡に喜びの花が咲いているのが見えたならば、なんともステキだと思いませんか。

参考文献:ダンマパダ・アッタカター(法句経注釈書)

プロフィル

あまの・わこう 1978年、青森県生まれ。東北大学文学部(宗教学)卒業後、夫と共に仙台市に単立仏教寺院「みんなの寺」を設立した。臨床宗教師でもある。著書に『みんなの寺のつくり方』(雷鳥社)、『ブッダの娘たちへ』(春秋社)、『ミャンマーで尼になりました』(イースト・プレス)など。現在、臨床宗教師に関するマンガを制作中。