平和への“雰囲気づくり”に挑戦するバチカン外交――教皇特使のモスクワ訪問(海外通信・バチカン支局)

ローマ教皇フランシスコは6月30日、バチカンで、正教会のコンスタンティノープル(現トルコ・イスタンブール)エキュメニカル総主教府使節団と面会した。この中で教皇は、「キリストの弟子として、戦争を廃絶できないと諦めて受け入れることはできず、皆が共に平和構築のために努力していく義務を有する」と述べ、「この悲劇的な戦争(ウクライナ侵攻)は、正義にかない、平和と安定に向けた道程を想定、実現するための創造的な努力を求めている」と訴えた。

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「国連安保理が満場一致で採択した“人類友愛決議案”」など海外の宗教ニュース(海外通信・バチカン支局)

国連安保理が満場一致で採択した“人類友愛決議案”

ウクライナ侵攻と、米・中国間での新たな“冷戦”によって分断された世界を反映するかのように、常任理事国が相互に拒否権を行使することで、国連安全保障理事会は完全な機能不全に陥っている。人類が二つの世界大戦による廃虚から立ち上がるために制定された国連憲章の精神を尊重、実行し、世界の安全保障と平和を促進するために創設された最重要機関が今、身動きできなくなり無力化しているのだ。

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忘れられた日本人――フィリピン残留日本人二世(11) 写真・文 猪俣典弘

戦後78年。命の尊さ、平和の大切さを伝えていく使命

防衛費の倍増が招く事態を憂慮

昨今、日本は防衛力の強化を加速させています。政府は昨年、2027年までに防衛費をGDP(国内総生産)の約2%、5年間で総額43兆円ほどにすることを決定。これは、年間軍事費を約10兆円に押し上げ、米国、中国に次ぐ世界第3位の規模です。岸田文雄首相は、毎年4兆円(300億ドル)の追加予算が必要と述べ、その25%を賄うために増税を提案しました。

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バチカンから見た世界(140) 文・宮平宏(本紙バチカン支局長)

ウクライナ侵攻後の世界は分断されていくのか

現代史は、人類が戦争と破壊の廃墟(はいきょ)から立ち上がろうと「世界平和」を希求するたび、必ずと言っていいほど裏切られてきた道程といえる。

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「国際カリタス 新会長に菊地功大司教を選出」など海外の宗教ニュース(海外通信・バチカン支局)

国際カリタス 新会長に菊地功大司教を選出

国連の救援機関に次ぐ世界最大の民間救援活動団体「国際カリタス」は5月11日から16日まで、『兄弟愛の新しい歩みを構築するために』をテーマに第22回総会をローマで開催し、13日の役員選挙で菊地功カトリック東京大司教区大司教(神言会、世界宗教者平和会議=WCRP/RfP=日本委員会評議員)を新会長に選出した。

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忘れられた日本人――フィリピン残留日本人二世(10) 写真・文 猪俣典弘

国際機関、政府、NPOが連携――「誰一人取り残さない」救済の実現を

2021年4月、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)駐フィリピン事務所が残留日本人二世(残留二世)に関する報告書を作成しました。この中で、フィリピンに残留した日本人を「無国籍のリスクにある人々」と認め、国家が緊急に解決するべき人道問題として、日本とフィリピンの二国間協議での解決を提言。一年をかけて両国の法律に照らし、残留二世の法的な立場や問題点を整理した報告書の発表は、彼らの存在を国際社会に広く知らせるものになりました。

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バチカンから見た世界(139) 文・宮平宏(本紙バチカン支局長)

「ナクバの日」に中東和平を願う宗教者たち

ローマ教皇フランシスコは5月14日、日曜日恒例であるバチカン広場での正午の祈りの席上、悪化する中東地域での紛争状況に対する憂慮を表明し、「ここ数日間、イスラエル人とパレスチナ人との間に新たな武力衝突が発生し、女性や子供など無実の人々が命を失っている」と述べた。

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過激カルト教団に対処するケニア政府(海外通信・バチカン支局)

ケニア東部の森林地帯で4月下旬、89人の遺体が埋葬された集団墓地が同国警察によって発見された。同国政府は、集団墓地の遺体が「断食によって餓死すれば天国に行ける」と説く、キリスト教をかたる過激カルト教団「グッド・ニュース国際教会」の信徒たちだと公表。同教会の指導者であるポール・マッケンジー・ンテンゲ容疑者を逮捕した。同容疑者は、「キリストを賛美せよ」と叫びながら連行されたという。

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バチカンから見た世界(138) 文・宮平宏(本紙バチカン支局長)

ウクライナ和平調停を目指すバチカン外交

ウクライナのゼレンスキー大統領は5月13日、バチカンを訪問し、40分にわたりローマ教皇フランシスコと会見した。バチカンが公表した声明文によれば、両指導者は「長引く戦争によって発生した人道、政治状況をテーマに懇談」したとのことだ。

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内戦の長期化が懸念されるスーダンでの軍事闘争(海外通信・バチカン支局)

スーダンでは2019年に、30年にわたり強権を行使してきたバシール政権が崩壊し、国軍の設立した「暫定軍事評議会」(TMC)と「自由と変化宣言」(DFC)の勢力が「政治合意」「憲法宣言」に署名したことで暫定政府が樹立され、民政への移管が試みられていた。しかし今年4月15日、国軍と準軍事組織「即応支援部隊」(RSF)の間で激しい戦闘が勃発。両軍事組織間での権力闘争(RSFの国軍編入)を機とする軍事衝突は首都ハルツームから全土に広がり、各地で銃撃戦や砲撃戦が展開されて市民の犠牲が拡大している。

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