過激カルト教団に対処するケニア政府(海外通信・バチカン支局)

ケニア東部の森林地帯で4月下旬、89人の遺体が埋葬された集団墓地が同国警察によって発見された。同国政府は、集団墓地の遺体が「断食によって餓死すれば天国に行ける」と説く、キリスト教をかたる過激カルト教団「グッド・ニュース国際教会」の信徒たちだと公表。同教会の指導者であるポール・マッケンジー・ンテンゲ容疑者を逮捕した。同容疑者は、「キリストを賛美せよ」と叫びながら連行されたという。

ローマ教皇庁外国宣教事業部の国際通信社「フィデス」は5月10日、ケニアのシャカホラ森林でも約20人が発見されるなど、集団墓地で発掘された遺体数は133人に上り、「いまだ、数百人の行方不明者が出ている」と報じた。数人の遺体には、首を絞められて窒息死した形跡があり、殺人の可能性も疑われている。

同国のキトフレ・キンディキ内相は、「森林内に多くの集団墓地があり、高度に組織化された犯罪」との見解を明かした。さらに、同内相は、政府として「信教の自由を擁護しながらも、宗教的影響力を犯罪に利用する者を追求する努力を続ける」「国家は宗教と闘うのではなく、信教の自由を利用して過激主義や犯罪行為を促進する組織から国を守るための活動に焦点を当てていく」と述べている。

これに先立つ4日、同国のルト大統領は、大統領府内に「ケニアにおける宗教組織統轄のための法的規制枠」と呼ばれる組織を創設。「国内に過激宗教組織が根を張ることを許した法的欠陥を是正し、地方レベルで急進的な宗教教団の台頭を阻止する法的枠組みを樹立」することを公約した。同組織は17人の諸宗教指導者や法学者で構成され、「フィデス」は、そのメンバーの一人に同国カトリック教会のマウリス・マクンバ大司教(キスム大司教区)が任命されたと伝えている。
(宮平宏・本紙バチカン支局長)