利害を超えて現代と向き合う

利害を超えて現代と向き合う――宗教の役割(49) 文・小林正弥(千葉大学大学院教授)

悪因悪果と善因善果

東京、神奈川、千葉、埼玉の1都3県で緊急事態宣言が3月21日をもって解除された。しかし喜ぶわけにはいかない。実際には、二度も期間延長したにもかかわらず、ここにきて新型コロナウイルスの新規感染者数は東京都などで増加に転じているからだ。緊急事態宣言と言っても実質的な施策が不十分であることをこの連載で指摘してきたが、残念ながら懸念した通りになってしまった。変異株が拡大し始めているので、本来ならば緊急事態宣言が解除できなくなってしまったことを認めて、その内容の大幅な拡充強化を改めて宣言しなければならないところだ。

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利害を超えて現代と向き合う――宗教の役割(48) 文・小林正弥(千葉大学大学院教授)

無為無策の結果

政府が1月7日に二度目となる緊急事態宣言を発令した時、菅首相は「1カ月での事態改善に全力を尽くす」と述べたが、感染は収束せずに宣言は延長された。しかし、国民の驚きは少ない印象だった。前政権時代から当局者が「瀬戸際の状況」(安倍首相、2020年3月28日)とか「勝負の3週間」(西村経済再生担当相、2020年11月25日)などと言っても、「勝負」に負けることが繰り返され、多くの人々が慣れっこになってしまったようだ。

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利害を超えて現代と向き合う――宗教の役割(47) 文・小林正弥(千葉大学大学院教授)

新年における「暗」――緊急事態宣言と連邦議会占拠という日米の非常事態

新年の連載初回にあたって、明暗を述べることにしよう。

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利害を超えて現代と向き合う――宗教の役割(46) 文・小林正弥(千葉大学大学院教授)

「鬼滅」世界と現実

先月は、「半沢直樹」や「鬼滅の刃」といった架空の作品世界に没入して楽しみつつ論じた(第45回)が、現実に目を戻すと、陰惨な光景が浮かび上がる。目に見える鬼がいるわけではないものの、「鬼」の気配が感じられるのだ。

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利害を超えて現代と向き合う――宗教の役割(45) 文・小林正弥(千葉大学大学院教授)

いま話題の大ヒット作品:「半沢直樹」と「鬼滅の刃」

最近、大ヒット作が立て続けに生まれている。テレビでは2013年に大反響を呼んだ「半沢直樹」が今年の7月19日から9月27日まで放送され、最終回は視聴率32.7%と2013年最終回以来の高い数字で、総合視聴率(リアルタイムとタイムシフトの視聴率の合計)は44.1%という。

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利害を超えて現代と向き合う――宗教の役割(44) 文・小林正弥(千葉大学大学院教授)

暗雲立ち込める政治

アメリカのトランプ大統領が新型コロナウイルスに感染して入院し、陰性にならないうちに退院して選挙活動を再開した。イギリス首相、ブラジル大統領と同じように、コロナ問題を軽視した国家指導者たちは、次々と自らも感染し、感染者数の増大により経済が停滞して、手痛い失敗をしている。

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利害を超えて現代と向き合う――宗教の役割(43) 文・小林正弥(千葉大学大学院教授)

「天は私たちを見捨て給わず」か?

安倍首相が病気を理由として8月28日に辞任を表明し、奇(く)しくも新型コロナウイルスの第2波が少し和らいできた。

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利害を超えて現代と向き合う――宗教の役割(42) 文・小林正弥(千葉大学大学院教授)

国家が機能停止して迎えるお盆

お盆を迎えた。死者に思いを馳(は)せる時である。通常の年ならば都会の人々が実家に帰省して、なかなか会えない家族・親族と顔を合わせ、墓参して先祖を供養する。

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利害を超えて現代と向き合う――宗教の役割(41) 文・小林正弥(千葉大学大学院教授)

大いなる慈しみと悲しみ

先月の明るい気分もつかの間に終わってしまった。東京都の新型コロナウイルスの新規感染者数が連日200人台に上がったにもかかわらず、政府も都も対応策を取ろうとしない。「休戦状態」の期間に次の危険に備える必要性を前回指摘したが、日本はそうせず、戦火が再び上がってさえも事態を放置しようとしているのだ。それどころか、政府は「Go To トラベル」事業を前倒しにすると発表し、批判を受けて東京だけ除外した。

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利害を超えて現代と向き合う――宗教の役割(40) 文・小林正弥(千葉大学大学院教授)

二重の明るいニュース

先月、この連載で、私たちは二重の危機にあると記した(第39回)。新型コロナウイルス問題による生命の危機と、検察庁法改正による「法の支配」の危機だ。その直後の5月25日に緊急事態宣言が解除され、これに先立つ同20日に政府は検察庁法改正を断念した。どちらも、久しぶりの明るいニュースだ。でも、安堵(あんど)はできない。私たちはここで何を考えて、どう行動すべきだろうか。

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