利害を超えて現代と向き合う
利害を超えて現代と向き合う――宗教の役割(15) 文・小林正弥(千葉大学大学院教授)
貧困問題と宗教
前回に書いたように、東アジアの歴史的変化は確かに進みつつあるように見える。北朝鮮と韓国の首脳が歴史的な会談を行った。両首脳が南北の境界線をまたいで共に歩いたのは、分断の悲劇の歴史をよく知る人々にとっては感動的なシーンだった。希望を失わずに「祈りと対話と行動」を続けることが大切だと改めて分かるだろう。
利害を超えて現代と向き合う――宗教の役割(10) 文・小林正弥(千葉大学大学院教授)
ネットの世界の問題点
政治家たちの行動にその時の心理的状況が現れ、そのような「政治における精神性」が有権者の印象を左右し、衆議院議員総選挙の結果に影響を与えた――そう前回に論じた。このように精神的・倫理的次元は、政治家にとっても、また有権者にとっても重要である。これは、日本に限ったことではない。
利害を超えて現代と向き合う――宗教の役割(9) 文・小林正弥(千葉大学大学院教授)
選挙結果がもたらした危険性
衆議院選挙は、与党が大勝し、議席の3分の2以上を確保した。改憲の発議が可能なので、政府はさっそく憲法改正の議論を呼び掛けた。前回の本欄で述べた通り、この選挙は「戦争か平和か、専制化か民主主義か」という岐路だったから、日本国民は戦争と専制化の道を選んだことになる。
利害を超えて現代と向き合う――宗教の役割(8) 文・小林正弥(千葉大学大学院教授)
戦争回避のための「祈りと対話と行動」
北朝鮮問題が激化し、安倍首相は「国難突破」のためと言って衆議院を解散した。いろいろな争点をメディアは報じるだろうが、圧倒的に大事なのは、戦争と平和、そして立憲主義や民主主義の危機という論点だ。
利害を超えて現代と向き合う――宗教の役割(7) 文・小林正弥(千葉大学大学院教授)
市民宗教とはなにか?〔1〕
かつて、多くの宗教の究極の夢は、国家や世界全体にその教えを広めて宗教国家をつくり、理想世界を実現することだった。日本でも古くは、聖徳太子が十七条憲法をつくって、仏教を中心に据えた国家の理想を示したとされている。近代国家では、憲法で国教を定めることは許されないから、このようなビジョンを掲げることは難しい。それに代わる公共的理想はありうるだろうか?
利害を超えて現代と向き合う――宗教の役割(6) 文・小林正弥(千葉大学大学院教授)
祈りの月における公共的な宗教協力
8月は日本人にとって共に祈る時期だ。伝統的なお盆があり、戦後には二つの原爆の日と終戦記念日が加わった。そこで、先祖の供養と戦没者の慰霊を行う月となったのだ。日本人はしばしば集って家族を考え、広くは戦争と平和の問題に思いを致して、一家の繁栄と日本や世界の平和を祈念する。家族と国民というコミュニティーの一員として祈るのだ。