「時代」の声を伝えて――文学がとらえた80年(14) 文・黒古一夫(文芸評論家)

日本中を震撼させた「天災」と「人災」

バブル経済が弾けた後、それまで日本全体を覆っていた「金がすべて」といった価値観に対する見直しや反省が、社会の各界各層で行われるようになった。そんな中の1995年1月17日、死者6434人、行方不明者3人、重軽傷者4万3792人を出す「阪神・淡路大震災」が起こり、改めて「天災(自然災害)」の恐ろしさを私たちは思い知る。

「地震と火山」の島である日本列島に住む私たちにとって、「阪神・淡路大震災」は、人ごとではなかったのである。だからこそ、人々は復興に向けて健気に活動を展開する被災地を見遣りながら、自分たちの在り方を考えざるを得なかったのである。

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