「時代」の声を伝えて――文学がとらえた80年(6) 文・黒古一夫(文芸評論家)

戦争の「本質」に迫る

1950年代の日本社会と文学との関係を考える時、忘れてならないことがある。それは、前回の第5回でも触れたように、敗戦後から続いていた連合国による「占領」下の1950年6月に朝鮮戦争が起こったこともあって、「戦争」及び「戦争体験」の意味を問うという戦後文学に通底するテーマの一つが、より深化した形で浮上してきたことである。

つまり、満州事変から15年にも及ぶ「戦争の時代」を経験した日本人は、戦後の「平和と民主主義」の時代を迎え、誰もが「もう戦争はこりごりだ」という思いを抱くに至ったが、歴史的に深い関係のある朝鮮半島で同じ民族同士が争う朝鮮戦争が起こり、1950年代にもう一度「先の戦争(体験)とは何であったのか」を問う文学作品が出てきたということである。

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