気づきを楽しむ――タイの大地で深呼吸(50) 写真・文 浦崎雅代(翻訳家)

善き行いを応援する方法を学ぶ――「これは駄目よ!」から「よくできたね!」へ

子を育てる――悩みや迷いを感じない人は、おそらく誰もいないだろう。もちろん私もその一人だ。日々成長する子供の様子に喜びを感じることもあれば、逆に戸惑いを感じることもある。今月に7歳の誕生日を迎える息子もまた、親である私自身にさまざまな学びや教訓を与えてくれる存在である。

とりわけ「しつけ」には、迷いが生じる。私たちはタイで暮らしているので、多くがタイの文化や社会の慣習に沿う形になる。しかし、私が唯一、〈これだけは文化や社会に関係なく息子にできるようになってほしい〉と思うことがある。それは「ゴミ捨て」だ。

ゴミ捨てに対するタイの人の意識は、今ではずいぶん良い方に変わってきているが、日本に比べるとやはり甘い。捨てるべきではないところに、ポイとゴミを捨ててしまう人もいる。息子の行動を見ていると案の定、お菓子の入っていた袋やパッケージをあちこちに捨てていた。〈これは今のうちにしつけておかないと、身につかないかもしれない〉と私は焦った。そして、息子がゴミを出すような場面では私の心が監視モードになり、ゴミ箱以外に捨てようとしたら、「そこに捨てては駄目だよ!」と言うようになった。

その方法でうまくいくかと思ったら、実は逆だった。今度は私が見ていないところで、目につかない場所にゴミを隠すようになったのだ。何かの拍子に私がそれを見つけ、がっかりしながらまた「ここに捨てては駄目よ!」と息子に言う日々が続いた。

【次ページ:応用行動分析学をヒントにして、習慣を変える】