心の悠遠――現代社会と瞑想(5) 写真・文 松原正樹(臨済宗妙心寺派佛母寺住職)

世は無常 全ては「一期一会」に尽きる

ブッダは「四諦(したい)」の第一を「苦諦」として、「この世は苦である」と説いた。苦楽の一方に偏して、「これは良い」「これは良くない」と何にでも判断や評価を与えようとするから、「苦」になるということである。確かに日々の生活では、つらいこと、悲しいこと、寂しいこともある。しかし、こう考えてみたらどうだろうか。私たちが出会う一日一日は全くの別物である。また、決して無駄な一日などないと。一年に春夏秋冬があるように、毎日の生活の中にも“春夏秋冬”があってよいのではないかと。晴れの日、雨の日、風の日、嵐の日、雪の日があるからこそ、人生が豊かになるのだと。人は「比べる」から、悩みや執着が出てくるのである。だから「比べない」こと。「諸法実相」なのだから、どんな状況に置かれたとしても起こる現象をありのまま受け入れて、「比べないから心が安らぐ」という生き方を「耕作」していく大切さを教えている。

ブッダの説いた最後の教えは、「無常」だ。全ての存在は必ず終わりがあり、永遠に続くものは何一つないということである。言い換えれば、全ては「一期一会」に尽きる。もう一度紹介しよう。

昨日という日はヒストリー、明日という日はミステリー、今日という日はギフト、今日という日は“プレゼント(現在)”だから。

日々を大事に、今この時を生きることが大切なのである。坐禅会の参加者は皆、真剣に聴いてくれた。文化はさまざまでも、皆、人間なのだと思った。

プロフィル

まつばら・まさき 1973年、東京都生まれ。『般若心経入門』(祥伝社黄金文庫)の著者で名僧の松原泰道師を祖父に、松原哲明師を父に持つ。現在、米・コーネル大学東アジア研究所研究員、ブラウン大学瞑想学研究員を務める。千葉・富津市の臨済宗妙心寺派佛母寺住職。米国と日本を行き来しながら、国内外への仏教伝道活動を広く実施している。著書に『心配事がスッと消える禅の習慣』(アスコム)。