心の悠遠――現代社会と瞑想(4) 写真・文 松原正樹(臨済宗妙心寺派佛母寺住職)
法華経観を日常生活に生かす大切さ
ここまで、日本臨済宗中興の祖として知られる白隠を通して、法華経のテーマである「悉有仏性」と「諸法実相」をみてきた。大事なことは、現代に生きる私たちが、法華経と白隠が遺(のこ)してきた「生きた遺産」をいかに日常の生活の中で生かしていくことができるかということである。
全てに仏性が、人間皆に平等に仏性が具わっていると信じる心を持つと、「諸法実相」というレンズを持つ目には、一体、一個人としての人、人間関係、さらには、私たちを取り巻く生態系がどのように違って見えてくるのか。私たちはどのように命というものを見つめていけば良いのか、どのように私たちの住む社会を、コミュニティーを、世界を積極的に見つめ直すことができるであろうか。法華経と白隠が遺してくれた「生きた遺産」は、私たちに多くの大事な問いを投げ掛けてくる。それと同時に、少しずつでも分かってきた時、それは百万の大軍を得た気持ちになるのもまた、本当のことのようだと感じている。
プロフィル
まつばら・まさき 1973年、東京都生まれ。『般若心経入門』(祥伝社黄金文庫)の著者で名僧の松原泰道師を祖父に、松原哲明師を父に持つ。現在、米・コーネル大学東アジア研究所研究員、ブラウン大学瞑想学研究員を務める。千葉・富津市の臨済宗妙心寺派佛母寺住職。米国と日本を行き来しながら、国内外への仏教伝道活動を広く実施している。著書に『心配事がスッと消える禅の習慣』(アスコム)。
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