仏教

新・仏典物語――釈尊の弟子たち(25)

生と死と I われを礼拝するものは

破れた板壁の隙間から日差しが差し込んでいました。その光の筋が薄暗い庵(いおり)の中で臥(ふ)せっている若者の顔を照らしていました。若者は顔を背けようともしませんでした。もう、その力もなかったからです。頬はそげ、熱を帯びた目は潤み、身体に掛けた薄い上掛けが苦しそうに上下していました。この朽ちた庵で、若者が養生を始めてひと月ほど経っていました。若者は出家したばかりの名もない修行僧でした。

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えっ、これも仏教語!?(29) 【おっくう】億劫

古くは「おくこう」、あるいは「おっこう」と読まれていました。それが転じて現在の「おっくう」となりました。

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新・仏典物語――釈尊の弟子たち(24)

最後の弟子

淡い月の光が、林を抜ける小道を照らしていました。月明かりに浮かぶ、その白い道を一人の老いた行者が歩んでいました。石につまずいてはよろめく身体を杖(つえ)で支えながら、スバッダはゆっくりと足を進めました。やがて、粗末な庵(いおり)が見えてきました。庵の傍らに立つ沙羅(しゃら)の樹の下に、釈尊が横臥(おうが)されていました。「お釈迦さまが今夜、入滅される」と伝え聞き、スバッダは釈尊のもとを訪れたのでした。

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えっ、これも仏教語!?(28) 【おうじょう】往生

現在では、「あの人は大往生だった」「往生際が悪い」など、死や、追いつめられて諦めの状態を表現するときに使われます。また、「道が混んでて往生した」など、“大変さ”や“困難”を表す場合に用いられます。

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新・仏典物語――釈尊の弟子たち(23)

ブッダの衣鉢を嗣ぎし者

眼下に樹海が広がっていました。その遥(はる)か遠くに城の尖塔(せんとう)がかすかに見えました。山の中腹に切り開かれた岩場に立ち、老いた修行僧はその風景を眺めました。身にまとった衣は破れ、身の丈を超える長い棒を杖(つえ)代わりにしていました。

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新・仏典物語――釈尊の弟子たち(22)

父祖の思い

急ぎ、謁見(えっけん)の間へ参れ――王から呼び出され王宮の広い部屋に入ると、釈尊が椅子に腰を下ろされていました。その傍らに釈尊の父である王も立っていました。二人に歩み寄ると、ウパーリ(優婆離=うばり)は王に命ぜられました。「さあ、世尊の髪を整えてさしあげよ」。

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えっ、これも仏教語!?(27) 【えんぜつ】演説

本来は、仏が真理や道理などの“教え”を説くことを指しました。

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法華経のこころ(19)

人間の生き方の究極の境地が示された法華三部経――。経典に記された一節を挙げ、記者の心に思い浮かんだ自らの体験、気づき、また社会事象などを紹介する。今回は、「法師品」と「如来寿量品」。

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えっ、これも仏教語!?(26) 【えこひいき】依怙ひいき

「依怙(えこ)」は、仏教語で「あるものを頼りにする」「頼りにして依りかかる」という意味です。

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新・仏典物語――釈尊の弟子たち(21)

釈尊の子

拳。左顔面に飛んできました。かわせない。二発目。右頬に衝撃を受けました。顔はゆがみ、鼻血が飛び散りました。ひと呼吸おいて、三撃目が襲ってきました。腹。息が詰まり屈み込んだ瞬間、首筋に蹴りを入れられました。ラーフラ(羅睺羅=らごら)の身体は地面にたたきつけられました。「ケッ、意気地のねぇ奴だ」。若者は唾を吐き捨て、仲間を連れて去って行きました。

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