平和こそ生活の原点 日本国憲法Q&A(8)――「政教分離の原則」はなぜ必要?
第二次世界大戦終戦後の1947年、日本国憲法は施行されました。憲法は「法の中の法」「決まりの中の決まり」ともいわれるもので、私たち一人ひとりの自由や権利を守り、その人生や生活を支えています。
憲法とはどのようなものなのか、日本国憲法はいのちの尊さ、平和、信仰といったことをどのように考えているのか、どうして憲法の改正には国民投票が必要なのか――。憲法についてさまざまな議論が起きている中、私たちはこうしたことをしっかりと学んでおく必要があります。今回は、「政教分離の原則」がなぜ必要で、どうして規定されたかを考えます。
Q8「政教分離の原則」はなぜ必要なのですか?
「政教分離の原則」とは国家と宗教の分離を目指すもので、厳密には、政治権力が特定の宗教団体を援助、あるいは圧迫しないように定めた原則です。
大日本帝国憲法の下では、神社神道が国教なみの地位を与えられ、手厚く保護されていました。当時の神社は、国家儀礼、国民道徳の源とされ、法的には一般宗教と別個の次元に置かれたのです。そうしたことから、神社神道の信仰や儀式が国民に強制されるようになりました。
戦前のこうした「政教一致」(祭政一致)の政治体制の下で、思想の統制が進められ、神社神道以外の宗教・宗派に対する有形無形の迫害や抑圧、弾圧が行われていきました。
そのような政治体制の下で、基本的人権の要と言われる「宗教を信じる自由」「宗教を信じない自由」が奪われ、精神的に不自由な時代を生きざるを得なかった人々が決して少なくなかったのです。
「宗教と政治の一致」の最も象徴的な形が、靖国神社の国家管理でした。戦前の靖国神社は、陸軍省と海軍省によって管轄され、戦争に従軍し、亡くなった戦没者が「神霊」として祀(まつ)られました。宗教と政治が密接に結びついて、時の政治権力に都合の良い体制や仕組みがつくられていきました。
政治権力が自分にとって都合の良い特定の宗教を利用して、国民を愛国主義・軍国主義へと煽(あお)っていったのです。
こうした歴史的事実と、そこから学んだ教訓を踏まえて、日本国憲法では「いかなる宗教団体も、国から特権を受け、又は政治上の権力を行使してはならない」(20条1項後段)と定められました。
ここに、基本的人権の要である「信教の自由」と、これを制度としてより確実に保障するために、「政教分離の原則」が規定されたのです。もっとも、憲法の「政教分離の原則」は国家と宗教との関わりを「全く許さない」とするものではありません。