平和こそ生活の原点 日本国憲法Q&A(6)――日本の安全は、軍事力でしか守れない?

第二次世界大戦終戦後の1947年、日本国憲法は施行されました。憲法は「法の中の法」「決まりの中の決まり」ともいわれるもので、私たち一人ひとりの自由や権利を守り、その人生や生活を支えています。

憲法とはどのようなものなのか、日本国憲法はいのちの尊さ、平和、信仰といったことをどのように考えているのか、どうして憲法の改正には国民投票が必要なのか――。憲法についてさまざまな議論が起きている中、私たちはこうしたことをしっかりと学んでおく必要があります。今回は、日本の安全と軍事力との関係について考えます。

Q6 日本の安全は、軍事力でしか守れないのでしょうか?

平和や安全は、私たち国民の願いであり、それを守ることは政府の務めです。ただし、自国への特別な思いが、「自分たちだけ安全であればいい」「自分の平和が優先」という考えや態度につながると、周囲の国やそこに暮らす人々のことは目に入らなくなってしまいます。

「備えあれば憂(うれ)いなし」「万一の備え」として軍事力を増強していくのは、一見正しいように見えます。しかし、人は武力に頼ろうとすればするほど柔軟な考えができなくなり、周辺国との間に摩擦や対立関係を招きかねません。

ほとんどの戦争が「自分たちの平和と安全を守るため」という大義を掲げて行われてきたことを考えても、軍事力は「諸刃の剣」だと言えます。暴力は憎しみを生み、復讐心は新たな暴力を生み出すだけです。力と力の戦いに終わりはないのです。法句経は「まことに、怨(うら)みは怨みによっては消ゆることなし。慈悲によってのみ消ゆるものなり」と教えています。釈尊のこの言葉を、今、私たちは謙虚に受けとめなければなりません。

【次ページ:平和の実現は、テロや紛争の原因に目を向けてこそ】