バチカンから見た世界

バチカンから見た世界(52) 文・宮平宏(本紙バチカン支局長)

女性差別に抗議するカトリックのシスターたち

ローマ教皇フランシスコは、社会が発展しているにもかかわらず、男性優位のメンタリティーが今なお存続し、女性に対する暴力は収まることがないとの憂慮の念をたびたび表してきた。広告や娯楽業界では、女性が享楽的な対象物として扱われるなど、「女性の虐待が存在し、人身売買の被害や経済的利益の犠牲を被っている」との考えも示している。

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バチカンから見た世界(51) 文・宮平宏(本紙バチカン支局長)

核軍縮と廃絶のみが核の抑止力――バチカン

米国のトランプ政権は2月2日、今後の核政策の指針となる核戦略見直し(NPR)を発表した。潜水艦から発射される弾道ミサイル(SLBM)に搭載される小型核兵器や、水上艦、潜水艦から発射できる新型の核巡航ミサイルの開発を骨子とするものだ。外国からの通常兵器による攻撃に対しても核兵器で反撃することを排除しない方針も打ち出した。

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バチカンから見た世界(50) 文・宮平宏(本紙バチカン支局長)

ホロコースト 欧州で終わらぬ過去の清算

第二次世界大戦中、ドイツ・ナチスのホロコーストによって、100万人とも200万人とも推定されるユダヤ人やロマ人、障害者、性的マイノリティーが殺害された。ポーランドにあったドイツ軍のアウシュビッツ強制収容所がソ連軍によって解放されたのは、1945年1月27日のことだ。

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バチカンから見た世界(49) 文・宮平宏(本紙バチカン支局長)

聖都エルサレムをめぐる問題――イスラーム政治指導者とバチカン

トランプ米大統領が昨年の12月6日、聖都エルサレムをイスラエルの首都と認定し、米大使館を移転させる宣言文書に署名したことに対し、エジプト・カイロのイスラーム・スンニ派最高権威機関「アズハル」のアハメド・タイエブ総長は、「エルサレムに大使館を移転させるという米国の実行を阻止しなければならない」と発言し、12月中旬にカイロで予定されていたマイク・ペンス米副大統領との会見を拒否した。今年に入り、アズハルは1月16、17の両日、同機関で「エルサレム支援のための国際会議」を開催した。86カ国から政治家やイスラーム、キリスト教の指導者が参加した。

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バチカンから見た世界(48) 文・宮平宏(本紙バチカン支局長)

ローマ教皇を感動させた一枚の写真と核兵器廃絶

ローマ教皇フランシスコは1月15日、南米のチリとペルーを訪問するため、ローマのフィウミチーノ国際空港を飛び立った。両国訪問は22日までとなっている。離陸後、教皇は、1945年に原爆投下直後の長崎で米軍の従軍カメラマンが撮影した「焼き場に立つ少年」の写真カードを70人の国際同行記者たちに配布し、こう述べた。

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バチカンから見た世界(47) 文・宮平宏(本紙バチカン支局長)

無量の悲哀に立ち向かう長崎の少年――ローマ教皇が取り上げた一枚の写真

核兵器なき世界の実現に向けて、「ヒバクシャ」が示す人類への「戒め」を、ローマ教皇フランシスコは重く受けとめてきた。現代人が解決すべき最優先事項との思いで、事あるごとに、彼らの声に耳を傾けるように訴えてきた。

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バチカンから見た世界(46) 文・宮平宏(本紙バチカン支局長)

エルサレムは2国家と3宗教の都市

トランプ米大統領がエルサレムをイスラエルの首都と承認し、米大使館をエルサレムに移転するように指示した12月6日、世界のキリスト教界から一斉に抗議の声が上がった。

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バチカンから見た世界(45) 文・宮平宏(本紙バチカン支局長)

エルサレムの嵐――トランプ大統領の宣言の波紋

トランプ米大統領は12月6日、エルサレムをイスラエルの首都として承認する宣言文に署名し、国務省に対してテルアビブにある同国大使館をエルサレムに移転させる手続きの開始を指示した。

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バチカンから見た世界(44) 文・宮平宏(本紙バチカン支局長)

法句経と聖フランシスコに示された共通の基盤

ミャンマー訪問中のローマ教皇フランシスコは11月19日、同国の国家サンガ大長老会議の指導者と会見した。席上、スピーチを行った教皇は、あらゆるものが関係して存在していることを教える仏教の諸法無我に照らして、人間関係の一致を実現していくには、あらゆる無理解、不寛容、偏見、憎悪を克服していくことが必要と強調した。その上で、「怒らないことによって怒りにうち勝て。善いことによって悪いことにうち勝て。わかち合うことによって物惜しみにうち勝て。真実によって虚言の人にうち勝て」※という法句経の一節と、「主よ、私を平和の道具となさしめてください。憎しみがあるところに愛を、争いがあるところに許しを(中略)、闇あるところに光を、悲しみあるところに喜びを」というキリスト教の聖フランシスコの言葉を引用。「こうした叡智(えいち)が、文化、民族、宗教的確信の違いによって傷ついた人々を癒やし、忍耐と理解を育むための努力に息吹を与え続けていくように」と願った。

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バチカンから見た世界(43) 文・宮平宏(本紙バチカン支局長)

対話するブッダとキリスト――アングリマーラと福音史家の聖マタイ

『仏教徒とキリスト教徒が共に歩む非暴力への道』を総合テーマに、11月13日から16日まで台湾の霊鷲山無生道場で行われた「第6回仏教徒・キリスト教徒会議」の席上、バチカン諸宗教対話協議会議長のジャン・ルイ・トーラン枢機卿は、仏教徒に「どのようにして、愛徳をもって真理を語るかについて学び合おう」と呼び掛けた。さらに、両宗教間の対話を促進し、共通の価値観を基盤とする協力関係の構築に向けて発展させる提案をしたことは、前回の本連載で報告した。

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