バチカンから見た世界

バチカンから見た世界(7) 文・宮平宏(本紙バチカン支局長)

狂信主義、過激派、暴力に共闘するアズハルとバチカン

「アラブの春」と呼ばれる民衆運動のさなか、2011年10月9日にエジプト・カイロで、ムスリム(イスラーム教徒)と同じ権利を訴えデモを行っていたキリスト教コプト正教会の信徒と治安部隊が衝突し、26人の信徒が死亡し、300人が負傷した。当時のローマ教皇ベネディクト十六世は、信徒殺害を非難し、信徒への連帯を表明。一方、カイロにあるイスラーム・スンニ派最高権威機関「アズハル」は、教皇の発言を「内政干渉」として批判し、バチカン諸宗教対話評議会との対話を「凍結する」と発表した。しかし、この5年間、バチカン諸宗教対話評議会は、イスラーム内部での改革に関して主導的な役割を果たしているアズハルとの対話再開の道を模索してきた。その努力が功を奏したのは昨年5月23日。アズハルのアハメド・タイエブ総長がバチカンを訪れて教皇フランシスコと懇談し、対話が再開された。

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バチカンから見た世界(6) 文・宮平宏(本紙バチカン支局長)

欧州に広がるポピュリズムに、歴史からの警鐘

欧州各国の社会で、「ポピュリズム」という言葉が語られるようになってから久しい。政治家が、人々の感情や情緒に訴えて、時には不安をあおって人気を得ようとする手法のため、「大衆扇動主義」とも呼ばれる。この政治手法は、グローバル化によって国や個人のアイデンティティーが喪失されていくことに恐怖感を持つ人々の心を捉えた。「自国第一主義」を主張する極右政党の勢力が拡大しつつある。一方、自国の優越性を強調する「国粋主義」が広がり、社会から寛容性が失われることに懸念も広がる。

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バチカンから見た世界(5) 文・宮平宏(本紙バチカン支局長)

大統領令に対するキリスト教諸教会の姿勢

トランプ米大統領は1月27日、国家の安全保障とテロ対策を理由に、中東とアフリカのイスラームを主流とする7カ国の国民の入国を一時禁止する大統領令に署名した。シリアからの難民の受け入れを停止し、他の難民の受け入れを一時禁止する内容も含まれている。

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バチカンから見た世界(4) 文・宮平宏(本紙バチカン支局長)

なぜ、バチカンから世界を見るのか?

「なぜ、バチカンから世界を見るのか?」――その答えは、1962年から65年まで行われた第二バチカン公会議の最終年、同市国内でローマ教皇パウロ六世と庭野日敬開祖の間で交わされた、「仏教徒がキリスト教徒のために祈り、キリスト教徒が仏教徒のために祈る」という言葉の中に凝縮されている。両指導者の間で交わされた言葉は、信仰や人種、文化の違いを超えて人を「結び付ける」(ラテン語でreligare)という、宗教の本質そのものに迫るものだからだ。

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バチカンから見た世界(3) 文・宮平宏(本紙バチカン支局長)

トランプ大統領による壁の建設に対して カトリック

トランプ米大統領は1月25日、中南米からの密入国者の流入を阻止するため、メキシコとの国境に壁を建設する大統領令に署名した。密入国者が犯罪やテロの温床になっていると主張するトランプ氏は、治安の観点から、彼らの強制送還などに関する大統領令にも署名し、不法移民対策の強化に乗り出した。

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バチカンから見た世界(2) 文・宮平宏(本紙バチカン支局長)

中東の和平構築に向けて――ローマ教皇とアッバス議長が会談

イスラエル政府によるヨルダン川西岸と東エルサレム(アラブ人居住区)へのユダヤ人の入植政策や分離壁の建設などにより、イスラエルとパレスチナ自治政府の和平交渉は停滞したままだ。交渉の再開を求めるパレスチナ自治政府のアッバス議長は1月14日、バチカンを訪問し、ローマ教皇フランシスコと会談した。

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バチカンから見た世界(1) 文・宮平宏(本紙バチカン支局長)

ローマ教皇 「外交は連帯実現の手段」

バチカンは現在、世界182カ国と外交関係を樹立している。毎年1月には、バチカンを担当する各国の外交団とローマ教皇が年頭の挨拶を交わし、席上、各国大使を前に教皇が国際情勢に対する見解を述べる慣習になっている。今年の年頭挨拶は9日に交わされた。

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