バチカンから見た世界(60) 文・宮平宏(本紙バチカン支局長)

戦争は戦争を呼び 暴力は暴力を呼ぶ――教皇

米国のトランプ政権は5月14日、イスラエルの同国大使館をテルアビブからエルサレムへ移転させた。これにより、パレスチナのガザ地区では米国とイスラエルに抗議するパレスチナ人の大規模デモが展開され、鎮圧にあたったイスラエル軍の銃撃などで子供を含む60人が死亡した。翌15日は、70年前のイスラエル建国によって約70万人のパレスチナ人が難民となったことを追憶する「ナクバ(大破局)の日」だったが、この日もパレスチナ人による抗議デモは続いた。

ローマ教皇フランシスコは16日、バチカンでの一般謁見(えっけん)の席上、「聖地と中東での緊張の高まりに対する深い憂慮」を表明し、「暴力の渦により、平和、対話、折衝の道から、さらに遠のく」とアピールした。パレスチナ人の死者や負傷者たちに「私の強い苦痛」と連帯を表明する教皇は、「暴力の行使が平和への道ではないことを再度、言明」した。「戦争は戦争を呼び、暴力は暴力を呼ぶ」からだ。そして、「紛糾の全ての当事者と国際共同体が、対話、正義と和平の優先に向け、新たな努力をするように」と呼び掛けた。また、「明日から始まるラマダーン(イスラームの断食月)」にも言及し、「この祈りと断食の特別なる期間が、神と平和の道を歩むことを誘うように」と願い、諸宗教対話による平和への道を提唱した。

聖地のカトリック司教団は15日、「もし、イスラエル軍が殺生を目的とした武器以外の鎮圧方法を選べば、パレスチナ人の虐殺は避けることができた」との声明文を公表した。カトリック司教たちは、「ガザ地区の約200万人のパレスチナ人への包囲を解除するように」とイスラエル政府に要請。「米国大使館のエルサレム移転など聖都エルサレムに関する一方的な決断は全て、どれもイスラエル人とパレスチナ人の間の和平を進展させることに貢献することはない」と主張している。「エルサレムが全ての人々に開放され、三つの唯一神教の宗教的な心臓部」となるように願う司教たちは、「エルサレムが、イスラエルとパレスチナ、双方の首都となることを阻止する、いかなる理由もない」とし、「それは、折衝と相互尊敬によって実現されなければならない」と呼び掛けている。