バチカンから見た世界(64) 文・宮平宏(本紙バチカン支局長)

米朝、南北、そしてバチカン

「朝鮮半島の非核化と、この地域における平和構築のための対話はやむことがない」。7月4日付のバチカン日刊紙「オッセルバトーレ・ロマーノ」は1面にそう掲載し、米国務省の声明文を引用しながら、駐フィリピンのソン・キム米大使が板門店の非武装地帯で北朝鮮政府関係者と懇談したと報じた。6月12日のシンガポールでの米朝首脳会談後、初めて開かれた両国政府間における実務者会議では、「米朝首脳会談での合意文書の内容を実現していくためのさらなる進展」について協議されたとのことだ。

同紙は、「近く(6~7日のうち)予定されている、ポンペオ米国務長官の3回目の北朝鮮訪問」にも触れ、その目的は「韓国と北朝鮮の対話を進展させて効果のあるものとし、さらに金正恩(キム・ジョンウン)北朝鮮労働党委員長の真意を探る」ことにあると指摘する。さらに翌5日付の同紙は、「北朝鮮との対話はすこぶる良く、全てがうまくいっている。ここ8カ月間、ミサイルの発射や核実験も行われていない」というトランプ米大統領のツイッターについても報道している。

トランプ政権は、北朝鮮の完全な非核化が実現される前であっても、1953年から休戦状態にある朝鮮戦争の終結を宣言し、平和協定を締結する方針(同4日付の共同通信社電子版)だと報道されており、この件もポンペオ国務長官と金委員長との間で話し合われると予測されている。米朝間の対話が進むと同時に、韓国と北朝鮮の間では「南北が道路連結で分化会議/交流拡大へ準備活性化」「南北、鉄道補修の共同調査で合意/連結区間の点検も」「韓国と北朝鮮、平壌でバスケ交流/金正恩氏の観戦に期待」(いずれも、共同通信社)といった事態の進展が、次々と伝えられた。同3日付の「アジアニュース」(教皇庁外国宣教会国際通信社)は、「海上での南北の軍用船同士の事故を予防するため、両国の艦船間の直接交信が可能になった」とも報じている。