バチカンから見た世界

バチカンから見た世界(20) 文・宮平宏(本紙バチカン支局長)

米大統領のバチカン訪問

トランプ米大統領は、就任後に初となる外遊先としてサウジアラビア、イスラエルとパレスチナ、そして、バチカンを選んだ。日程は5月20日から24日まで。ティラーソン米国務長官は、この大統領の訪問先の選択を次のように説明した。「大統領は、イスラーム国(IS)のテロによって代表される悪の勢力に対して、3宗教の信仰が結束するならば、われわれはISに勝てると確信しているからだ」と。

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バチカンから見た世界(19) 文・宮平宏(本紙バチカン支局長)

アズハルに響いた諸宗教者の声

4月27、28の両日、エジプト・カイロにあるイスラーム・スンニ派最高権威機関アズハルで開催された「平和のための国際会議」の席上、「アブドッラー国王宗教・文化間対話のための国際センター」(KAICIID)のファイサル・ムアンマル事務総長が講演に立った。「平和とは、人間同士の友愛を根幹とするものであり、あらゆる預言者が示した基本条件」と述べた。その上で、「偽りの信仰によって正当化される暴力」を非難し、そうした暴力行為は「われわれの歴史や文化とは異質のものであり、イスラームを含めて、あらゆる宗教的価値とは矛盾する」と主張した。

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バチカンから見た世界(18) 文・宮平宏(本紙バチカン支局長)

「聖」を名乗る暴力の仮面を剥がす

エジプト・カイロにあるイスラーム・スンニ派最高権威機関アズハルで開催された「平和のための国際会議」の席上、ローマ教皇フランシスコがスピーチに立った。冒頭、エジプトを「文明の地」と呼び、エジプト文明が知と教育を奨励し、その営みの叡智(えいち)によって多様な出会いの場と分かち合いの機会が見いだされたと語った。また、「同盟の地」とも位置づけ、エジプトの歴史において、「異なる信仰が出会い、さまざまな文化が混じり合い、しかし、混交されることなく、(国家という)共通善に向けて同盟する重要さが認知されていった」と述べた。

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バチカンから見た世界(17) 文・宮平宏(本紙バチカン支局長)

前例のない悲劇の解毒剤は宗教――タイエブ総長

4月28日にエジプト・カイロに到着したローマ教皇フランシスコは、大統領府でシーシ大統領と懇談後、今回の訪問で最も重視していたイスラーム・スンニ派最高権威機関「アズハル」で行われている「平和のための国際会議」の会場に向かった。

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バチカンから見た世界(16) 文・宮平宏(本紙バチカン支局長)

平和を説く者に防弾ガラスは要らない――ローマ教皇

ローマ教皇フランシスコは4月28日朝、エジプト・カイロを訪問するためローマ空港を飛び立った。カイロ訪問に際し、教皇は、『平和のエジプトにおける平和の教皇』をモットーに掲げた。エジプトのタンタとアレクサンドリアにあるコプト正教会の2教会で爆弾テロ攻撃され、47人が犠牲となった事件から3週間後に当たっていた。

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バチカンから見た世界(15) 文・宮平宏(本紙バチカン支局長)

シナイ半島で勢力強めるイスラーム国

4月20日付のバチカン日刊紙「オッセルバトーレ・ロマーノ」は1面で、エジプトのシナイ半島で聖カタリナ修道院に向かう途上に設置された政府軍の検問所が攻撃され、3人の警官が死傷したと報じた。事件後、「イスラーム国(IS)」を名乗る過激派組織が、犯行声明を出した。

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バチカンから見た世界(14) 文・宮平宏(本紙バチカン支局長)

礼拝中の宗教者を攻撃する者は、宗教者にあらず

イタリア北部トリノにある「新宗教研究所(CESNUR)」の統計によると、昨年、自身の信仰を守ったために殺害された世界のキリスト教徒の総数は9万人に上った。また、5~6億人のキリスト教徒が、信教の自由が十分に保障されない状況下で生活しているとのことだ。特に、中東やアフリカで「イスラーム」を名乗る過激派組織が台頭し、キリスト教徒を迫害するようになってから、世界のキリスト教界では「殉教のキリスト教一致」といった表現が聞かれるようになった。キリスト教の諸教会が、「殉教者」によって一致しているというのだ。

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バチカンから見た世界(13) 文・宮平宏(本紙バチカン支局長)

「魂と民を失った」と懸念される欧州連合は、どこに向かうのか(下)

欧州連合(EU)の礎石となった「ローマ条約」調印(1957年)の60周年を祝う式典を翌日に控えた3月24日、ローマ教皇フランシスコは、EUに加盟する27カ国とEUの首脳をバチカンに迎えて演説した。英国が離脱するなど、EUの崩壊が懸念される中、結束を呼び掛ける内容だった。

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バチカンから見た世界(12) 文・宮平宏(本紙バチカン支局長)

世界の危機的状況には、核兵器では対処できない

核兵器を国際条約によって法的に禁じる「核兵器禁止条約」の制定交渉が3月27日から31日まで、ニューヨークの国連本部で行われた。

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バチカンから見た世界(11) 文・宮平宏(本紙バチカン支局長)

「魂と民を失った」と懸念される欧州連合は、どこに向かうのか(上)

欧州連合(EU)の礎石となる「ローマ条約」の調印(1957年3月25日)から60年が経過した。当時のベルギー、フランス、イタリア、ルクセンブルク、オランダ、西ドイツの6カ国の代表が調印したローマ市庁舎に、3月25日、英国を除くEU加盟の27カ国の首脳が集い、条約調印60周年を祝うとともに、統合の将来像を描く「ローマ宣言」に署名した。英国の離脱を前に、結束を強める狙いがあるとみられている。

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