弱小チームから常勝軍団へ~佼成学園高校アメリカンフットボール部「ロータス」クリスマスボウル3連覇の軌跡~(8) 文・相沢光一(スポーツライター)

食事の大切さを学ぶ「食事セミナー」

激しいコンタクトゲームであるアメリカンフットボールでは、体を大きく、強くするための食事とフィジカルトレーニングが不可欠だ。その点でも、多くの人がサポートする体制がロータスにはある。

なかでも重要な役割を担うのが部員の保護者、とくに母親である。

ロータスでは入学式の後、新入部員とその保護者に対し、食事のセミナーを行う。

「学年ごとに大まかな目標を設定しています。1年生はフットボール選手としての基礎的な体をつくる時期で、激しい当たりに耐え得る大きな体をつくることが必要になります。2年生は大きくした体に筋肉をつける時期、3年生は高校生としてトップレベルのフィジカルを獲得し、試合で優位に戦えるようにする時期です。特に1年生は、中学時代の食生活を一変させ、バランスを考えた食事を大量に摂ってもらう必要がある。家で食事をつくるのはお母さんですし、お父さんにもそれを知っていてもらった方がいい。ですから、セミナーに参加してもらい、栄養素の知識や体組成の仕組み、摂って欲しい食事量のことなどを新入部員と共に学んでもらっています」(小林監督)

その内容を詳細に記すスペースはないが、ご飯を例にとれば、1回の食事で600グラム以上(どんぶりで2杯)摂るよう協力を求めるそうだ。

他の高校アメリカンフットボール部も体づくりは必須であり、食事指導をしているに違いない。だが、新入部員だけでなく、その両親に対してもセミナーを行う学校は少ないだろう。

体づくりにおいて保護者も意識を高め、主体的に関わってもらおうという狙いの食事セミナーの効果はてきめんで、入学からの1年間で、多い部員は40キログラム、平均でも15キログラムも体重が増えるという。なお、2年生や3年生も同様の食事を続けるが、2年生は1年間で増えても3~5キログラム程度、3年生はあまり増えないという。代謝が良くなり、摂った栄養を効率よくエネルギーに替える体になるということだろう。

この食事セミナー、以前は小林監督が講師を務めていたが、2016年からはサプリメントの『ザバス』を開発・製造する株式会社明治の管理栄養士、太田智子氏が担当するようになった。

部員自らが栄養を考えた食事を摂っている

「太田さんの指導で、私自身が認識を新たにしたのはフルーツの重要性です。グレープフルーツなどのビタミンCを多く含む果物を摂るように教えてもらっています。ビタミンCというと風邪の予防や美容に良いといわれますが、コラーゲンの生成を助け、腱や靭帯の強化にもつながるそうです」(小林監督)

食事セミナーは全部員に対しても年に3~4回のペースで行っている。その効果を太田氏はこう語る。

「テーマを変えながら繰り返しセミナーを行うことで、部員の食事に対する意識が高くなりました。それを実感するのは合宿でバイキング形式の食事を摂る時です。好き嫌いに関係なく、自分に必要だと思う栄養をしっかり摂っている。これまで多くのアスリートやチームを見てきましたが、ロータスの部員ほど食事に対する意識が高いケースは見たことがありません。食事の重要性を実証する見本になって欲しいくらいです。そのためには強くあり続けてもらうのが一番ですから、試合ではつい応援に熱が入ってしまいます」

食事と並んでアメリカンフットボールにはフィジカルトレーニングが欠かせない。2014年からは、そのフィジカル担当のヘッドトレーナーとして加瀬剛氏を招へいした。

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