ちょっと軽く、ストレッチしてみましょう(12)最終回 加瀬剛(スポーツトレーナー、佼成学園高アメフット部ヘッドトレーナー)

意識を変えて健康な体にする

先述したヨガのインストラクターさんたちにも、今までの運動を一切変えることなく、意識を“伸ばす”から“縮める”に切り替えるだけで良いと伝えています。彼らはストレッチの達人なので、筋肉についての正しい知識を理解すると、これまでのストレッチが体をいかに酷使していたかを簡単に理解してくれます。

また、ジムや部活動などで、ウオーミングアップとして一生懸命“筋肉を伸ばすストレッチ”をしている人を見掛けます。これは、“筋肉を伸ばすことで筋肉は柔らかくなり、けがを防止できるから”と、ご本人だけでなく、その指導者たちも誤った認識をしていることがあるからです。正しい知識が広まることを願ってやみません。

私がサポートしている佼成学園高校アメリカンフットボール部は、4年前から練習や試合前に筋肉を伸ばす運動は一切せず、筋肉を縮める運動だけを行ってきました。

けがの多い競技ですが、他のチームに比べ、練習や試合でのけがは圧倒的に少なく、年末に開催される全国高等学校アメリカンフットボール選手権大会決勝戦(クリスマスボウル)を3連覇し、今年は4連覇に挑んでいます。けがが少ないことからも、筋肉を縮ませることの大切さがお分かり頂けるかと思います。

最後に、体の不調は姿勢が原因で起こることが多いとされています。

ですから、体幹を意識することはとても重要で、その上で筋肉を正しく縮めてあげることにより、痛みの無い体を保ちつつ、パフォーマンスの向上、そしてけがの予防や回復が図られるのです。

これをお読み頂いている皆さんには、これまでお持ちの常識を変えてもらえればと思います。ストレッチをしている時のフォームはそのままに、“伸ばす意識”から“縮める意識”に変えてみてください。

正しい体と筋肉の仕組みを理解し、痛みの無い健康的な生活を送れるよう、心から祈っています。

長い間、ご愛読くださり、ありがとうございました。

プロフィル

かせ・つよし 1968年、東京生まれ。獨協大学外国語学部英語学科、自然カイロプラクティック学院、米国ニューメキシコ大学アスレチックトレーナー学科、日本医学柔整鍼灸専門学校をそれぞれ卒業。現在、キネシオ接骨院(http://kinesio-sekotsu.com/)院長として患者の治療にあたるほか、キネシオテーピング療法の普及に尽くす。母校である佼成学園高校アメフット部「ロータス」のヘッドトレーナーとして、2016年からの同チーム全国大会3連覇に貢献した。著書に『キネシオテーピング・アスレチックテーピング併用テクニック』(スキージャーナル)、『勝つための最強体幹力メソッド 』(創藝社)。