TKWO――音楽とともにある人生♪ アルトサクソフォン・田中靖人さん Vol.3

創立60周年を迎えるにあたって

――来年、佼成ウインドは創立60周年を迎えますね

そうです。楽団としては、ここ10年ぐらいでメンバーの3分の2が入れ変わりました。僕の一回りほど上の世代の団員が大勢退団し、代わって新しいメンバーが加わったからです。今はフレッシュな顔ぶれになりました。まさに、フレッシュな楽団です。

ただ、この短期間でメンバーが入れ替わったので、「東京佼成ウインドオーケストラ」のスタイル、音、十八番(おはこ)としていたものなど音楽的な部分も変化しました。変化は「成長」でもあるので、今、佼成ウインドは伝統を基にどんどん成長して、新しい歴史をつくっている瞬間でもあると思っています。

その最中に迎える60周年――節目は、これまでを振り返り、これからを考えるとても大切なタイミングになります。佼成ウインドが現在していることは、かつて何年もかけて立てたプランが土台にあって、「この時には、こんなメンバーがいるだろうから、こういった演奏ができるかな」「こういうことをやりたいよね」という、先を見据えて考えていたからこそ、今があるんです。来年に60周年を迎える今の僕たちもそれを見習い、過去10年間でわれわれが得たものを振り返り、10年先の佼成ウインドはどうありたいかというビジョンを考え、示していきたいと思います。

――人生で選択に影響を与えた曲を挙げるとしたら?

一つは、高校2年生の時に聴いた曲です。当時、吹奏楽部の顧問の先生にピアノのレッスンを受けていて、レッスンの休憩中には、先生から必ずクラシックを聴くようにした方がいいから、レコードを買ってくるよう言われていました。その時に買った一枚が、ベートーベン作曲の「交響曲第7番」(カール・ベーム=指揮、ウィーンフィルハーモニー管弦楽団=演奏)です。この演奏を聴いて、クラシックって本当に素晴らしいなと思いました。

もう一曲あります。高校2年生の時に大室勇一先生から習うことになり、初めてのレッスンの日に、クラシカル サクソフォンの演奏が録音されたカセットテープを渡してくださった話をしましたが、その一曲目に入っていた曲です。サクソフォンの巨匠であるマルセル・ミューリが演奏する「アルト・サクソフォンとピアノのためのソナタ 」(ポール・クレストン作曲)。初めて聴いたクラシカル サクソフォンの音色に衝撃を受けました。この曲は、初めて聴いた時から今日まで何十回も演奏してきた曲です。演奏するたびに、大室先生のレッスンに通い始めた頃を思い出し、毎回新鮮な気持ちになります。

演奏家のエネルギーの源は、観客の方々の笑顔といわれます。コンサート会場で、皆さまの笑顔に出会えることを、僕たちも楽しみにしながら、これからも日々、真剣に取り組んでいきます。

プロフィル

たなか・やすと 1964年、和歌山市生まれ。TKWOコンサートマスター。第4回日本管打楽器コンクール第1位を受賞。国立音楽大学卒業後、1989年にTKWOに入団し、ソロ、サクソフォン4重奏団「トルヴェール・クヮルテット」でも活動している。また、現在は昭和音楽大学、愛知県立芸術大学などで講師を務めている。