TKWO――音楽とともにある人生♪ クラリネット・太田友香さん Vol.3

クラリネット奏者の太田友香さんは、東京佼成ウインドオーケストラ(TKWO)に入団して、今年で13年を迎えた。最終回では、音楽家として海外のコンクールに積極的に挑戦してきた理由や、吹奏楽に取り組む中高生に向けたメッセージを紹介する。

音楽家としてさらに成長するために

――太田さんにとって、TKWOはどのような存在ですか

メンバー同士、それぞれの音楽への取り組みを認め合い、何でも言える関係が築けています。とても心地よく、私にとって「第二の家族」のような存在です。

メンバーはTKWOで活動しながら、別にアンサンブルを組んだり、自主的にコンサートを開いたり、若手は国内外の指導者を訪ねてレッスンを受けたりして、チャレンジを忘れず、音楽家として腕を磨き続けています。皆が向上心の塊で、それぞれの活躍はうれしいですし、私も皆に刺激を与えられるような存在でありたいと思います。

互いに理解し合えているからなのか、ツアーで一緒にいたにもかかわらず、その直後にメンバーでレクリエーションとして旅行に出掛けても、楽しく過ごせるのです。家族からは、「1週間も一緒にいたのに、また集まるの?」とあきれられました(笑)。この旅行に行った団員の何人かが、SNSに旅行のことを投稿し、「第二の家族です」とつづっていたのを見た時は、私と同じ思いなのだとうれしくなりました。

――太田さんは、入団後も海外のコンクールへの挑戦を続けています

私には留学経験がありません。ですから、すでに佼成ウインドのメンバーでありながら、異文化に触れたり、国外での音楽教育を受けたりすることで、自分の感性を磨きたいと思って挑戦してきました。

コンクールというと、演奏の評価で競い合うイメージを持つ方も多いのではないでしょうか。そうした側面もありますが、私にとっては、音楽的な視野を広げる意味合いの方が強いのです。世界的なコンクールとなると、高い目標を持った向上心の旺盛な音楽家が全世界から集まります。自分とは違った環境、先生のもとで学んだ同世代の音楽家の素晴らしい演奏に触れる絶好の機会です。私はコンクールで大きな刺激を受けますし、モチベーションが上がります。

それともう一つ。コンクールでは、各国の審査員から講評を頂くのですが、これが貴重なんです。例えば、開催国も課題曲も異なる複数のコンクールに出場したにもかかわらず、私の演奏に対して同じような課題を指摘されると、〈同じことを言われちゃったな〉と、自分の弱点をしっかりと見つめることができます。反対に、私に自覚がないものの、演奏の良かった点を挙げてもらうと、長所を発見して、もっと伸ばそうと思えます。

演奏家は、音楽と向き合い続けるうちに、自分一人の世界に没入してしまいがちなので、第三者による講評は、客観的に自分の演奏を知る機会、謙虚な気持ちになれる機会になります。音楽家としてさらに成長するための大切なヒントを得て自分の演奏能力をさらに磨き、佼成ウインドの演奏に還元できればと思い、取り組んできました。

――入団して13年。演奏家としてプロのキャリアを積む中で、心境の変化はありますか

私は今、音大(音楽大学)で講師を務めていて、今春、4年間指導した教え子たちが巣立っていきました。最近は、佼成ウインドに若い団員が少しずつ入ってきています。これまで私は、音楽に対して真摯(しんし)に向き合う佼成ウインドの先輩たちの後ろ姿を追い掛けることで精いっぱいでしたが、彼らの姿から、今度は自分が、後輩たちから見られる立場になっているのだと気づきました。一層身の引き締まる思いです。

自分自身の音楽家としての歩みにも、変化の兆しを感じています。多くのコンクールには年齢による出場制限が設けられているので、30代半ばに差し掛かった私は、今までのような頻度でコンクールに挑戦できなくなります。他の音楽家の演奏に触れ、その刺激によってモチベーションを高めてきた自分のスタイルをどのように維持するのか、あるいは変えていくのか。いずれにしろ、成長を続けていくために何を自分の刺激にしていこうかと、その方法を求めている最中です。

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