TKWO――音楽とともにある人生♪ アルトサクソフォン・田中靖人さん Vol.3

音楽を極めるにも、楽団員が心を合わせて音を奏でるにも愛情が大切と田中靖人さんは話す。今年4月で入団30年になり、来年にはTKWOが創立60周年を迎える。楽団として大切にしてきたこと、今後の抱負とあわせて聞いた。

楽しんでもらえる演奏を

――佼成ウインドとして大切にしていることは?

クオリティーの高い演奏、これは大前提です。僕たちは聴いてくださる方がいて初めて演奏家と言えます。観客やファンの皆さんが「ニコニコしているかな」「真剣に聴いてくださっているかな」ということを意識して、楽しんでもらうことを大切にしています。

加えて、気を配るべきことがあります。舞台の上は、全てが演出であり、そこに立つ者には見られているという自覚が欠かせません。演奏とともに雰囲気をつくっていく。CDで聴くのと違って、コンサート会場では奏者の雰囲気づくりも大切な要素だと思います。

――田中さん個人として大切にしていることはありますか

それは、「オーケストラ愛」ですね。そうではなく、「仕事です」と、非常にドライな考えで演奏している人も音楽業界にはいますが、僕にとっても仕事ではあるんですが、佼成ウインドに関することは、まず愛を持って取り組むことを心がけてきました。

愛を持って取り組むようにしていると、どんな場面も楽しんで乗り越えることができると信じています。

音楽の現場以外でも、コンサートマスターは、事務所のスタッフと会議をして、運営のことや、時にはシビアなことについても話し合わなければなりません。オーケストラは、さまざまな人たちが一堂に会しているわけですから、問題や悩みはつきもので、意見の相違からぶつかることもあります。

ですが、佼成ウインドが好きで、もっと良くしたいという思いから衝突が生まれるのなら、それはとても大切なことだと思います。このオーケストラで、みんなで一つのものをつくり上げていくという思いがあれば、必ず良いものが生まれてくるはずです。愛情がなければ、仮に問題が淡々と片付いたとしても、次につながるものは少ないですし、「みんな、好きなんだから」という気持ちで話し合った上で出てきたものとは違いますよね。このオーケストラが好きで、お互いを尊敬し合う関係づくりを心がけています。

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