「時代」の声を伝えて――文学がとらえた80年(3) 文・黒古一夫(文芸評論家)
戦争が終わって
1945年8月15日、日本がポツダム宣言を受諾し、戦争を終結することが全国民に発表された。これは、1894(明治27)年の日清戦争に始まり、日露戦争(1904・明治37年)、第一次世界大戦への参戦(1914・大正3年)、シベリア出兵(1918・大正7年)、山東出兵(第一次・第二次 1927~28・昭和2~3年)、満州事変(1931・昭和6年)、日中戦争(1937・昭和12年)、ノモンハン事件(1939・昭和14年)、太平洋戦争(1941・昭和16年)と50年以上の長きにわたって続いた「戦争の時代」が、ようやく終わったことを意味する。
これらの戦争名を見ればわかるように、明治維新によって成立した近代日本の50年は、まさに「戦争=侵略の歴史」でもあった。そのことを踏まえれば、1945年8月15日以降の日本は、アメリカを中心とした連合国による占領期(1945年~52年)も含んで、多大な犠牲(アジア太平洋戦争に限っても約320万人の犠牲者を出した)の上に、「平和国家・新生日本」を建設せんと国民が一丸となって努力を重ねた日々であった、とも言える。