気づきを楽しむ――タイの大地で深呼吸(38) 写真・文 浦崎雅代(翻訳家)

体という心の家に、安らぎの時間を――今ここから、できる自身のケア

世界中で、新型コロナウイルス(COVID-19)の感染が拡大している。私の住むタイでも非常事態宣言が出され、人々の生活に大きな影響を与えている。感染により命を落とされた方のために祈りを捧げたい。また、現在治療中の方、懸命に治療に当たっている医療従事者の方、感染拡大を防ぐために対策を練る各国の政治リーダーや組織の責任者の方、そして、まさに感染の予防に努め、不自由な生活を強いられながらも協力している私たち一人ひとりに、いたわりと感謝、そして励ましの気持ちを表したいと思う。

今こうして原稿を書いている私自身も時折、不安な気持ちに襲われる。感染症は新型コロナウイルスに限らず、人類がこれまでに何度も体験したことであれど、その危険がいざこうして自分の身に降り掛かってくると、冷静ではいられない。もし感染したら? もし誰かを感染させてしまったら? 悪い想像は容易に膨らんでいく。

私が今いるウィリヤダンマ・アシュラムは、瞑想(めいそう)修行場であり、僧侶も在家修行者もいる。もちろん、アシュラムでも外出自粛等の行動制限のルールが設けられた。実は、今ここにいるのはタイ人だけではない。たまたま感染が広がる以前に中国からタイに来て、現在の事態によって結局故郷に帰れなくなってしまった中国人家族も、避難生活を送っている。皆がそれぞれに感染予防に精いっぱい努めているが、その中でも最も大切にしているのが日々の心のケアである。

リーダー僧のスティサート師の提案で、今、外出できず、家にいる方々に対して、アシュラムでの夕べの読経とその後の説法の様子を毎日、オンラインで配信している。私はそれを日本語に翻訳して配信する。同時通訳に徹しながら、これまで日々培ってきた気づきの鍛錬がいかに大切かを、しみじみ思い知らされる。

現在のような状況下だと、人は負の感情や思考にはまり込みやすい。それでは、「どのように日々を過ごせば良いのだろうか」と考えさせられるが、説法では、こうした時の心の持ち方、あり方が非常に具体的に語られる。それは、誰もが、今ここでできることだ。

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