気づきを楽しむ――タイの大地で深呼吸(23) 写真・文 浦崎雅代(翻訳家)

善き友と歩く――早く行きたければ一人で行け、遠くへ行きたければ仲間と行け

昨年12月1日から8日まで、タンマヤートラ(法の巡礼)に参加した。タイ東北部に位置するチャイヤプーム県で毎年行われる、歩くイベントだ。今回で19回を数える。

目的は、自然環境の大切さを学ぶことと、「気づき」を大事にして歩くこと。瞑想(めいそう)修行であると同時に社会運動、そして自分を鍛えるチャレンジでもある。今年のテーマは『シンプルに生き、世界に関心を持つ』で、東北タイの重要な水資源の一つであるチー川の源流を最終地点とした111キロの旅であった。

今回は400人以上が参加した。タイだけではなく、中国、アメリカ、カナダ、遠くはスイスからの参加者もいた。日本人は私を含め13人(うち1人は、スカトー寺で最近出家したお坊さま)。22歳から76歳までの幅広い年齢層で、初参加が5人。初めてタイを訪れたという方もおられた。

タンマヤートラ参加者と共に(前列左端が筆者)©「Neng Tieo」

タンマヤートラの魅力の一つが、リーダーであるパイサーン・ウィサーロ師の説法だ。朝晩の読経後に行われる彼の説法は、栄養ドリンクが体力を回復させるように心に染み渡る。なぜ「歩く」という手段を使って自然環境を学ぶのか。暑さや寒さ、体の疲れや痛み、数の限られた設備(トイレ・シャワー等)など、思い通りにならない環境の中で、心をどう整えていくのか。自分の足で一歩一歩進む努力や辛抱の大切さなど、毎日、その時々の参加者の心の動きに寄り添いながら、法(タンマ)につながる珠玉の説法を聞かせてくれるのである。

説法の中で、よく語られていたフレーズがある。「早く行きたければ一人で行け、遠くへ行きたければ仲間と行け」。アフリカのことわざのようだ。111キロの長い道のりを一人で歩けと言われたら、すぐに挫折してしまうだろう。ここまで歩けたのは、共に歩む仲間のおかげだと、私はその言葉の重みを日々味わいながら歩いていた。そんな大切な仲間たちとの印象深い一コマを、少しだけお伝えしよう。

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