気づきを楽しむ――タイの大地で深呼吸(15) 写真・文 浦崎雅代(翻訳家)

リアル一休さんはタイにいた!(前編)――小坊主さんたちの仏教サマーキャンプ

一足早く夏がきた。タイでは3月から5月半ばまでが夏休み。最も暑い季節である。この時期、私には楽しみにしている出会いがある。それは「一休さん」。古い日本のアニメだが、タイ人なら誰もが知っている。リアル一休さんとは、つまり、沙弥(しゃみ=未成年の僧侶)のことだ。

夏休み中に児童生徒が一時的に出家する習慣がある。もちろん強制ではない。本人の自主性に任せられる。ただ、“一時出家”を最も喜ぶのは親や親戚たちである。出家は徳を積む絶好の機会。多くの親が出家による子供たちの成長を期待する。おそらく子供たち自身は、仏教を学びたいというよりも、親を喜ばせたいという気持ちの方が強いのだろう。実際、私の夫も最初の出家が10歳の時なのだが、お父さんを喜ばせたいのと、仲のいい友達が出家するからという、かなり軽いノリで出家したのだそうだ。

ライトハウスと縁の深いスカトー寺でも、この時期に子供たちが一時出家する“仏教サマーキャンプ”が行われる。今年は3月25日から4月12日までの約3週間で、9歳から14歳までの男女が対象。年々人気が高まって、今年は80人以上が参加した。男の子は剃髪(ていはつ)するが、女の子は剃髪しなくてもいい。ただ、修行服を着て共に八戒(生き物を殺さない、盗みをしない、性交しない、うそを言わない、酒を飲まない、装身化粧をやめてきらびやかに飾らない、歌舞を聴視しない、高くゆったりしたベッドに寝ない、昼以降何も食べない)を守る。食事は午前中のみで、読経も托鉢(たくはつ)も、気づきの瞑想(めいそう)もプログラムにきっちり組まれている。それらは大人を対象とした瞑想リトリートと同じである。違うのは、さまざまな楽しいアクティビティーがあることだ。寺だけではなく、目隠しでの林歩きや森林でのキャンプ、バードウォッチング、絵画、自然の道具を使ったホウキ作り、農家から教わっての米作りや肥料作りなど、フィールドワークも盛りだくさんなのだ。

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