気づきを楽しむ――タイの大地で深呼吸(12) 写真・文 浦崎雅代(翻訳家)
サンカーンがはっきりしてきたね!――元お坊さんの子育て目線
3歳9カ月になる息子は、大のお父さんっ子だ。私が出掛ける際にはほとんど泣かないのに、夫が一人で出掛けようとするとすぐに察して、「ポー(おとうさん)」と言いながら、一目散に追い掛けていく。
夫は子供とのコミュニケーションが上手だ。ただ、時折ちょっと変わった感想をつぶやくことがある。出家生活が長かったので、還俗(げんぞく)した今でも仏教が身についており、子供に対しても仏教目線なのだ。
息子が、何かの拍子に夫に叱られた時のこと。息子は泣きながら大好きなおもちゃを指さして、「ロットケーン(トラクター)!」と叫んだ。叱られたくなくて、話題を逸(そ)らしたのだ。すると夫は、ふっと笑顔になり「サンカーンがはっきりしてきたね!」と言った。
サンカーンとは「行(意志作用)」という意味で、「○○をしたい」という心の働きを指す。仏教で五蘊(ごうん)と呼ばれる命を構成する五つの要素(色・受・想・行・識)の一つだ。五蘊は仏教を学ぶと必ず出てくるキーワードである。しかしその時、私にはピンとこなかった。それでも、子供の成長を丁寧に見ていく中で、それがはっきり分かってきたのだ。
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