それでいいんだよ わたしも、あなたも(6) 文・小倉広(経営コンサルタント)

変わるのに20年かかるか? 1カ月で変われるか?

私は年間に100回程度、講演や企業研修で話をする機会があります。そこで、必ずと言っていいほどされる質問が、「人は変われますか? 変わるのにどれくらい時間がかかるでしょうか?」というものです。

私がアドラー心理学を学んだ先生は次のように教えてくれました。

「人が変わるには四段階あります」と。その四段階とは、次のようなものです。

これを一通り説明すると先生は、「最終的な『無意識的上手』になるためには、まぁ、それまで生きてきた年数の半分はかかるでしょう。40歳なら20年、というところでしょうか」と話しました。

私は現在、53歳。ということは、私が(4)の「無意識的上手」に到達するためには、あと27年が必要となります。その時、私は80歳。平均寿命が尽きる頃です。では、私はもう手遅れなのでしょうか。

私はそうは思いません。

人が本当の意味で変わった、と言えるのは確かに(4)の「無意識的上手」の段階です。しかし、周囲の人から見て、変化を感じるのは(4)だけでしょうか? 私は違う、と思います。

(3)の「意識的上手」がある程度できるようになったとしたら、周囲の人、その人を別人だと感じるでしょう。さらに言えば(2)の「意識的下手」ですら、変化を感じることでしょう。これまでは、何のてらいもなく堂々と不適切な行動を取っていた(1)のような「無意識的下手」な人が、失敗をするたびに「ハッ」と気づき反省するのです。

(2)の「意識的下手」な人は、明らかに(1)の「無意識的下手」の人とは違います。周囲の人は「意識的下手」 な人に対してでさえ「あの人は変わった」と思うことでしょう。

そのように考えると、(2)意識的下手 になるだけで、つまり、自らの不適切な行動に気づき、反省するだけで、人は大きく変わったと言えるのです。その段階に到達するために、カウンセリングを受けたり、セミナーでグループ討議を繰り返したり、それを日常生活に活かす訓練をしさえすれば(読書だけでは難しいと思います)、人は1カ月や2カ月で別人のように変わることが可能だと思います。

大事なのは、いきなり高望みをしないこと。(4)の「無意識的上手」を目指さないこと。それは、悟りを開くに等しい変化です。そうではなく、(2)の「意識的下手」や(3)の「意識的上手」をまずは目指すのです。それならば1、2カ月で変わることができるのですから。

プロフィル

おぐら・ひろし 小倉広事務所代表取締役。経営コンサルタント、アドラー派の心理カウンセラーであり、現在、一般社団法人「人間塾」塾長も務める。青山学院大学卒業後、リクルートに入社し、その後、ソースネクスト常務などを経て現職。コンサルタントとしての長年の経験を基に、「コンセンサスビルディング」の技術を確立した。また、悩み深きビジネスパーソンを支えるメッセージをさまざまなメディアを通じて発信し続けている。『33歳からのルール』(明日香出版社)、『比べない生き方』(KKベストセラーズ)など多くの著書があり、近著に『アルフレッド・アドラー 一瞬で自分が変わる 100の言葉』(ダイヤモンド社)。