それでいいんだよ わたしも、あなたも(5) 文・小倉広(経営コンサルタント)
ネガティブエンジンとポジティブエンジン
あなたはどちらのエンジンで頑張っていますか?
自分のできていないところに“ダメ出し”をして、恐怖感と欠乏感を使って自分を追い込むネガティブエンジンですか?
それとも、自分のできているところに“良い出し”をして、喜びとワクワクで自分を動かすポジティブエンジンですか?
僕の知っている限り、世の中の99%の人はネガティブエンジンで頑張っているように思います。おそらく他に方法を知らないのです。
僕はといえば、ついこの前まではネガティブエンジンで頑張っていました。ポジティブエンジンなんて甘っちょろい。理想論だと思っていたわけです。しかし、心理学を学び、それを日々実践している仲間と過ごす時間が増えるうち、ごく自然にポジティブエンジンに切り替わってきたみたい。気がつけば、できていないことが山ほどあっても自分を責めず、できているところにフォーカスして自分を許せるようになってきた。するとワクワクなポジティブエンジンが回って、楽しみながら前へ前へと進むのです。
ネガティブエンジンで生きる人は、自分を信じていない人です。「自分へのダメ出しをやめてしまったら怠け者になってしまうに違いない」「歩みを止めるに違いない」と、自分を疑っているのです。
一方、ポジティブエンジンで生きている人は、自分を信じて生きている人です。自分に“良い出し”をして気持ち良くさせても、ちゃーんと怠けず、楽しみながら上を目指すと自分を信じているのです。
ネガティブエンジンで生きている人は、世間体ばかり気にする人です。自分に“良い出し”なんかしたら「うぬぼれ屋、怠け者だ」とバカにされていると信じている人です。それはすなわち「他人を信じていない」ということです。自分が楽しく生きていることを周囲の人は祝福してくれない。否定するに違いないと信じている。
一方、ポジティブエンジンで生きている人は、世間体を気にしません。自分に“良い出し”をしても、周囲の人は「良かったねー」と祝福してくれる、と信じている。他人を信じているのです。
ネガティブエンジンで生きている人は、シャドーボクシングでくたびれている人です。周囲の人は敵ではなく味方なのに、勝手に敵だと勘違いしパンチを繰り出して、くたくたに疲れている人です。
一方、ポジティブエンジンで生きている人は、周囲が仲間だと知っているのでシャドーボクシングなどせず、いつもリラックスして自然体でいます。だから、活力が失われず、いつも元気です。
あなたはどちらのエンジンで生きていますか? どちらのエンジンで生きていたいですか? 僕は、50歳を目前にエンジンを総取っかえしました。そして、おかげさまで過去最高のワクワク感に満たされ、その結果、過去最高の業績を実現しています。
皆さんがどちらを選ばれるかは皆さんの自由です。でも、ポジティブエンジンという世界があることは、ぜひ知っておいてほしいのです。人生は一度しかないのですから。
プロフィル
おぐら・ひろし 小倉広事務所代表取締役。経営コンサルタント、アドラー派の心理カウンセラーであり、現在、一般社団法人「人間塾」塾長も務める。青山学院大学卒業後、リクルートに入社し、その後、ソースネクスト常務などを経て現職。コンサルタントとしての長年の経験を基に、「コンセンサスビルディング」の技術を確立した。また、悩み深きビジネスパーソンを支えるメッセージをさまざまなメディアを通じて発信し続けている。『33歳からのルール』(明日香出版社)、『比べない生き方』(KKベストセラーズ)など多くの著書があり、近著に『アルフレッド・アドラー 一瞬で自分が変わる 100の言葉』(ダイヤモンド社)。