それでいいんだよ わたしも、あなたも(10) 文・小倉広(経営コンサルタント)

助けてもらうことは、助けること

「小倉さん、気配りがすごいですね」

パーティーや食事会の席などで、よくそう言われます。おしゃべりにみんなが熱中している時に、空いたグラスや、邪魔な大皿が気になり、一人黙々とお酌をしたり皿を片付けたりするからです。

一方で、相手から気遣いをされるのを断ります。「大丈夫。自分でできます」。そうしてまた、コマネズミのようにくるくると動き続けるのです。そして、途中で気がつきます。またやってしまった、と。相手に、親切にするのは得意なのですが、相手から親切にしてもらうことが苦手な、いつもの僕が顔を出してしまったのです。

アドラー心理学では、協力を大切にします。そして、協力の定義の中に「相手が勇気を持てること」を前提として挙げているのです。勇気とは「私には能力(自己管理能力と貢献能力)があり、周囲の人は仲間だ」と感じることです。つまり、協力とは、相手が「私には能力があり、周囲の人は仲間だ」と感じられるようにお手伝いをすることです。

ですから、放任は協力ではありませんし、逆に過干渉も協力ではありません。なぜならば過度に干渉されることで相手は、「私は一人では自分のことができない、と相手の人は思っているのだな」と自信を失うからです。立派に自分のことができる人を助ける人はいません。過度に干渉する、ということは「どうせあなたは一人ではできないでしょ」と言っているようなもの。つまり、協力ではないのです。

私が食事の席でやっていたお酌や片付けは、もしかしたら過干渉の一種かもしれません。そして、一方通行の親切は、相手のことを仲間だと考えていない証拠かもしれません。相手のことを仲間だ、と思えていたならば、相手から親切にしてもらうことを恐れる必要はないわけです。堂々と協力してもらえばいい。すると、相手は「私は小倉さんを助けることができた。私には貢献能力があるのだ」と勇気を持つことができるようになるでしょう。つまり、私が誰かから助けてもらうことは、その人を勇気づけることになるのです。

助けてもらうことは、相手を助けること。相手を勇気づけること。

助けてもらうことを拒否することは、相手の活躍の機会を奪うこと。相手の勇気をくじくこと。

相手を助け、そして、堂々と相手から助けてもらうこと。

この連鎖がお互いへの感謝や、自分自身の貢献能力に対する自信につながり、良い輪が広がるのです。助けてもらうことは、助けること、なのです。

プロフィル

おぐら・ひろし 小倉広事務所代表取締役。経営コンサルタント、アドラー派の心理カウンセラーであり、現在、一般社団法人「人間塾」塾長も務める。青山学院大学卒業後、リクルートに入社し、その後、ソースネクスト常務などを経て現職。コンサルタントとしての長年の経験を基に、「コンセンサスビルディング」の技術を確立した。また、悩み深きビジネスパーソンを支えるメッセージをさまざまなメディアを通じて発信し続けている。『33歳からのルール』(明日香出版社)、『比べない生き方』(KKベストセラーズ)など多くの著書があり、近著に『アルフレッド・アドラー 一瞬で自分が変わる 100の言葉』(ダイヤモンド社)。