気づきを楽しむ――タイの大地で深呼吸(39) 写真・文 浦崎雅代(翻訳家)
タイでホームスクーリング(前編) 親子で学ぶ「生きるための自立」
今年4月8日で、息子は満6歳になった。3年間通った村の幼稚園。先生方や友達にもよくしてもらい、元気いっぱいで卒園した。集団生活が苦手な息子だが、先生方の理解に助けられた。無理やり集団行動を強いることなく、彼の興味に共感しながら、新しい世界を教えてくれた。エネルギーに満ちあふれた何十人もの子供たちを教え導く先生方に、改めて感謝の思いが湧いてきた。
以前から私たち夫婦は、今後どのように息子を育てていこうか、とよく話し合っていた。その結果、小学校にそのまま入学させるのではなく、基本的にはホームスクーリングで育てていくことにした。ホームスクーリングとは、家庭で親が子供の学習をサポートすることを中心に置いた教育方法である。その方法を採用しようと思った主な理由は三つ。一つ目は、組織に依存し続ける生き方ではなく、主体的に生きるための自立につながる学びを伝えたいということ。二つ目は、自然により親しみ、本人の関心や意欲を大事にして、学ぶことに十分な時間を与えたいということ。三つ目は、「先生」とは必ずしも学校の教諭だけではなく、誰でも「先生」として学ぶことが可能であると考えていること。この三つである。
私自身は、学校という場に当然のようにお世話になった人間で、学校は好きだった。学校で大切な友人や素晴らしい先生方との出会いがあり、人生に大きな影響を与えてもらった。しかし、時代は確実に変化している。私たちの世代は、学校教育というシステムに頼り、それが当然だと思ってきたが、今後は果たしてどうなのだろうか……。そんな疑問が私たち夫婦に生じていたのだった。