平和こそ生活の原点 日本国憲法Q&A(2)――憲法は何のためにあるの?

次に、国の統治機構の面では、人権の保障が名目だけのものにならないようにするため、国民主権の下で立法(国会)・行政(内閣)・司法(裁判所)の三権を分立させています。

さらに、平和主義の面では、国民の生命や自由や幸福が戦争で奪われてはならないということから、「戦争を政治の手段とせず、その代わりに国民の安全保障を確保するために世界のいずれの国とも友好関係の輪を広げ、深めていこう」という国際協調主義を謳(うた)っているのです。

しかし、日本という国のこうした大もとの決まりが国家権力の暴走や乱用によって破られると、国民一人ひとりの尊厳が奪われてしまいます。

そこで憲法はこのようなことが起きないように、「天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ」(99条)と定め、天皇をはじめとして公務員に憲法を尊重し擁護する義務を課しました。

ところで、この99条をよく見てください。ここには「国民」が含まれていないことに気づくでしょう。どうして憲法尊重擁護義務を負う者の中に、「国民」が含まれていないのでしょうか。外国には、かつての西ドイツから統一ドイツに引き継がれた憲法のように、国民に憲法尊重擁護義務を課している特別な例もありますが、日本はそうではありません。それは、一体、なぜなのでしょうか。

これには、二つの理由が考えられます。一つは、ここに謳われている憲法尊重擁護義務が、国家権力の担い手の恣意(しい)的な権力行使を防ぎ、憲法を護ることを目的としていることです。つまり、政府や国家権力の意向によって、国民の基本的人権が侵害されたり、国の政策が平和主義から逸脱したりしないための歯止めなのです。

もう一つの理由は、もっと根本的に、日本国憲法前文が「日本国民は」という主語で始まっていることからも分かるように、「この憲法をつくったのは日本国民である」ということです。つまり、国家権力が国民に命令しているのではなく、国民が国家権力に命令しているという考えが、ここに働いています。

それは、まさしく「国民主権」という原則の当然の帰結なのです。